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第3話
紫吹まひるというヘルパーは無機質で、それがかえって興味をそそられた。甘えても、嫌味を言っても反応はいつも同じだ。
仕事に徹してるからか、元々冷めた性格なのか。
でもたまに微笑んでいる気配がして、それが結構好きだったりする。
(なんでもやってあげては、瑞原さんのためにならないんですよ。自立するためにサポーターがいるんです)
そんな風に拒絶されるかと思ったが、自分の横を熱が通り過ぎたと思ったら、シャッというカーテンが開く音がした。
ほんの僅かだけ光を察知できる視界に、赤みがさす。日光が当たっているのか、足元に陽の暖かさを感じた。
カラカラと窓が開くと風が吹き込んだ。それを爽やかだと感じたということは、相当部屋の空気が淀んでいたのかも。
続いて床を移動していく足音はキッチンへ向かい、冷蔵庫のドアを開く音がした。
「食材があまりありませんね。掃除が終わったら、歩行訓練がてら買い物もしましょう。
今日は忙しいですね」
満更でもなさそうな雰囲気に、頬が緩む。
まひるから、何か言いたそうな気配がした。
「なに?」
「いいえ、なんでも」
まひるはそう言うと、キッチンで音を奏で始めた。
ガタガタ。カコン。チチチチカチッ。コンコン。
ジュワーッ。トントントン。グツグツ。
音とともにいろんな素材の香りが漂ってきて、嗅覚が刺激された。
「やっぱり、家事は女の方が気が利くよなぁ」
今までのヘルパーと比べて、思わず口をついた。
異性に甘えたいのかもしれない。
肌を重ねて癒されたいと思っているのかも。
エロい動画も本も意味をなさなくなったおかげで、専ら妄想をし、風呂場で処理をするだけだ。
達した後の虚しさといったらない。
この先も、こんな状態で独り身のままかと思うと自嘲気味になる。
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