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第7話

ベンチで悟に掛かった液体は、墨汁だった。 パニックになって謝る青年をなだめているうちに、彼に見覚えがあることに気づいた。 「君、見たことあるけど、何で?」 スーツを汚したことで青くなっていた青年は、悟に問われて青を通り越して白くなった。 「郵便の配達員です」 消え入るような声で言う青年をまじまじと見つめ、悟は思い出した。 「ああ、うちに配達に来る!」 いつもは配達員の制服を着ているが、今日はVネックの黒いカットソーに黒いジーンズを履いて、仕事中は上げている前髪も下ろしているのでかなり印象は違うが、間違いなく悟のマンションに配達に来る郵便局員だった。 イヤな予感しかしないが、聞いてみた。 「ここで、こんなもん持って、泣いているのは、なぜ?」 青年は再び涙をこぼし、うつむいた。 悟は怒りのあまり、目の前が赤くなった。 「あのバカやろう!彼女だけに飽き足らず、男とも浮気してやがったのか‼︎」

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