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第8話
詳しい話を聞かずには気が済まなくなった悟は、披露宴に出席している後輩に、気分が悪いからと先に帰る旨を伝えると、青年を連れて居酒屋に行った。
スーツ代はいいからお詫びに奢れと言われて、青年は渋々ついてきた。
ビールを不味そうにすすりながら、青年は川井史彦と名乗った。
少し童顔であっさりした顔立ちの史彦は、塩顔の美男子として社内外でも有名な悟ほどの美貌はないが、つぶらな瞳が愛らしく、友喜の好きなタイプだった。
史彦は悟に問い詰められて、友喜との事情をポツリポツリと語り始めた。
悟のマンションに配達に行ったある日、書留を自宅まで届けて、留守番をしていた友喜と出会った。友喜は史彦を一目で気に入り、その場で口説き落とした。
自分が本命ではないことは分かっていたが、少年時代から悩んできた性癖をあっさり見抜き、なおかつあっけらかんと口説いてきた友喜にどんどん気持ちが傾いていった。
友喜はゲイで、本命は悟だと思ったいたので、結婚すると言われた時は本当に驚いた。結局悟も浮気相手なのかと気の毒に思っていたら、思わぬ提案をされた。
「何て言われたの」
自分の知らないところで、子供みたいな青年に気の毒がられていたことにムカつきながらも、平静を装って悟は聞いた。
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