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第11話
マンションの7階にある悟の部屋には、書留などを届けに玄関先までは来たことがあった。友喜とは、友喜の部屋で会っていたので、悟の部屋に上がるのは今日が初めてだった。
恋人の浮気相手として憎まれると思っていたので、もう少し飲もうと誘われて驚いたが、今日はひとりになりたくなかったので、ついてきてしまった。
史彦をリビングに通すと、悟はキッチンの棚からジンのボトルを取り出し、グラスをふたつ持って来た。
木の天板にスチールの脚のついたお洒落なローテーブルにグラスを置き、ジンを適当に注ぐと、窓を開けてベランダに出た。
居酒屋で飲んでいる間に暗くなり、遠くに見える山の裾まで灯りが続いてダイヤモンドをまき散らしたように瞬いていた。
悟は家でしか吸わないタバコをくわえて手すりに縋り、黙って夜景を見ていた。
少し長めにカットしてある前髪が目のあたりに垂れ、昼間のスーツに合わせて髪の毛をきちんと撫で付けたノーブルな雰囲気と変わって、崩れた色香が悟を纏い、美しさに妖しさが加わっていた。そんな姿によく似合うアンニュイな様子で、面白くもなさそうにぷかぷか煙を吐いていると、史彦が出て来た。
史彦は悟の隣で手すりに両手乗せると、外をじっと見ていた。
薄暗いベランダで見ると儚げな様子が増し、薄闇に溶けていきそうだった。
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