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第16話
結婚式翌日の日曜日、昼近くになって訪問者がチャイムを鳴らすまで、悟と史彦はお互いを貪り合っていた。磁石でくっついているような二人の体を引き剥がすと、悟は訪問者を確認するためにベッドを出た。
「後輩が引き出物を持って来てくれたらしい」
全裸のまま戻ってくると、史彦が自分の服をかき集めていた。
「…帰るのか?」
史彦はビクッとして振り返ると、一瞬切なげな表情を浮かべたが、すぐに笑顔を作って言った。
「なんかイヤなこと全部忘れられた気がします。ありがとうございました」
「腹減ってないか?良かったら、飯でも」
「いえ、明日は月曜日なんで、今から帰って洗濯とかしないと」
「送るよ」
「大丈夫です」
史彦は悟を振り切るようにバスルームに入っていった。
悟は頭をぽりぽり掻くと、スウェットを着て鍵を持ち部屋を出た。
エレベーターで降りて行きながら、上がってきた時にはもう史彦はいないんだろうなと、ぼんやり考えていた。
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