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第20話

「あれ、入れてくれないの?」 「なんで、入れなきゃいけないんだ」 「だって、積もる話もあるし」 ニヤニヤ笑う顔は、新婚旅行で訪れたハワイで焼いたのだろう、真っ黒く日焼けしていた。 こう言う無神経なところが、付き合っている頃は明るく鷹揚な性格と前向きに捉え好ましかったが、別れた今となっては単なるガサツでいい加減な男にしか思えない。 「俺、失敗したかも。お前が忘れられない」 ドアを背にして立つ悟の前に立ちはだかり、片手を壁について悲しげにしかめた顔を近づけた。 「へえ?」 自分でも驚くほど感情のこもらない声が出た。 「なあ、俺は…」 なおも言い募ろうとする友喜を押しのけて、悟は2人の間に距離を取った。 「やり方は最低だったけど、彼女を選んだのはお前に取って正解だったと思う」 「悟?」 「お前は普通のやつだ。彼女はお前が望む普通の幸せをくれる。出世とか、世間体とか、そのうち子供だって。俺はお前に何にもやれない。俺との火遊びで、自分が一番欲しがっている普通の幸せを台無しにするな」 一度は好きだと思った相手への、悟にとって精一杯の餞けの言葉だった。 友喜も悟の気持ちを理解してか、黙ってうつむいていた。

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