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第22話
風邪をひいたあの日、薬で何とか熱を下げると悟はテレビ局に向かった。
近くのコンビニに車を停めると、テレビ局の周囲をあてもなく歩き回った。
周辺に建っているアパートの表札を見て、川井の文字を探した。探してどうするのかは、考えてなかった。ただただ史彦に会いたかった。
3つめのアパートの1階の端の部屋に、ようやくそれらしき名前を見つけた。ブザーを鳴らしても返答はなく留守のようだったので、ここで待つことにして悟はドアの前に座り込んだ。薬が切れたのだろう、熱がまた上がってきたようだ。両脚の間に頭を垂れて、目をつぶった。
どのくらいそうしていたのか、どうやら眠ってしまったらしい。
肩を揺すられて、悟は我に返った。
顏を上げると、ぼんやりとした視界に心配そうな史彦の顔が映った。
「桐谷さん、どうしたんですか?」
心配そうな、しかし大いに戸惑った様子で、悟の体に腕を回して呼びかけている史彦の声を聞きながら、安堵の気持ちとともに、もっと激しい感情が湧き上がってきた。
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