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第五話※
「こい」
「……はい」
「いやか」
「……いえ」
寝台へ投げるように座らせると、ガーレフは服を脱ぎだす。
「おまえも脱げ」
リルは丈の長い亜麻布の寝間着をたくし上げ、無表情な顔の王を前に、人肌をあらわにした。
「後ろをみせろ」
「……っ、はい」
四つん這いになり、枕に顔を伏せる。ガーレフはごつごつと骨ばった指で窄まりがひらいているのを確認し、すでに柔らかさを帯びた後孔の縁は、蜜でぬめって指を滑らせた。
「柔らかいな」
「……ッ」
後孔が緩んでいるのを確かめて、ガーレフは硬さを帯びた先端部を一気に挿入した。剛直の芯には骨があり、茎に棘のようなものがびっしりと密生していた。棘の先端は丸みを帯び、奥へと埋めていくほどリルの秘裂を割って擦りつけるように肉襞を搔いた。ぴゅっと白濁液が飛び出し、シーツを汚すとガーレフが笑う。
「きもちよいか」
「……っ、は、……はい」
「おまえも獣だな」
「……んっ、……んぁ……ッ」
うつ伏せになり、ゆすぶられるたびにリルは声を必死の思いで押し殺した。ガーレフの尖った爪が膨らんだ部分をつつくと、びくびくと身体が波立ったように果てた。
「うごけ」
「は……、い……っ」
リルは尻を突き出して、太腿をつかって自ら動いた。膨れ上がった海綿体を襞に押し当てながら、食いしめた。ガーレフが果てるまで、リルは抽挿を繰り返す。一時の快楽を味わいながら、背中を弓なりに反らしたどたどしい動きで快楽を与え続ける。手枷がないだけましだ。売春宿では首輪をつけて、人間は犬のように犯される。
ガーレフは果てる前に、リルの背中を押さえつけ、跳ねる腰を折れてしまうほどに柔肉のなかを穿った。心と肉体が裂けるようなこの行為は獣そのものといっていい。
それでも、リルにとっては慰めになっていた。
(次の発情期がくるまえに……)
フェロモン値が高まる発情期に王は来ない。
慰めるべきときが来ると、リルは宮廷から出された抑制薬で熱く滾った身体をおさめる。幾重もの布地でまとって隠し、求められないという恐怖の中、ただ闇の中に沈んで耐えた。いままで飲んでいた薬よりも強い効能を示したが、陰鬱な気持ちにリルを、心を、すべて閉ざした。
(……陛下は僕を愛していない)
行為がおわれば堕胎薬を与えられ、ガーレフの前で飲むことを約束されている。ガーレフが離れを去るときには、リルは吐気が止まらず、めまいと悪寒に苦しめられた。
(これが、僕の役目……)
ガーレフ以外は受け入れられない身体となっても、求められるだけで歓喜してしまう。
番いとなり、存在しているだけ。ガーレフの顔を目にするだけでほっと胸をなで下ろし、愛のない情交がリルの淋しさを和らげるように満たしていた。
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