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二話
朝、目を開けるとカーテンから覗く清々しい朝日と賑わう人々の声が聞こえた
「…朝……」
ボゥっとする頭を覚ます為に俺は身体を起き上がらせて、乱れたベッドから出るとどこからか美味しそうな匂いがして釣られるようにキッチンに向かう
そこには普段以上にボサボサの髪をして朝食を作るアイツの後ろ姿があって、機嫌がいいのか鼻歌なんかが聞こえる
「…あっ、おはよう。朝食出来てるよ」
「んー。はよぉ」
俺に気付くと鼻歌は止むが、凄く嬉しそうに微笑む姿は三十路とは思えない可愛さだった
本人には絶対に言わないけど
近づいてくるソイツは俺の額に軽くキスをすると身体を抱き締めて小さく呟く
「今日も素敵だね。僕の恋人さん」
「~~~~~っアンタはホントに、恥ずかしい事ばっかり言うの止めてくんないかなぁ」
「ハハハ、でも嫌いじゃないでしよ?」
はにかむコイツに何の反論も出来ない俺も大概だと思うが、それにしても同じ日本人だと思えないくらいにはクサい台詞ばかり言うからこっちは心臓が保たない
だけど、こんな日常生活も悪くないとさえ思うくらいにはコイツの事が好きなのは認めてやらんでもなくはない
「あのさ、いい加減離してくんない?顔洗いたいんだけど」
「あぁ、ゴメンゴメン。つい愛おしくて」
「~~~~~~~っ」
また恥ずかしい台詞を言ったソイツに俺は照れ隠しで腹にパンチを喰らわしてやると、抱き締めた腕は離れて腹を押さえている
その瞬間に洗面所に向かって顔を洗うと、さっきのが少し効いたのか分からないが恥ずかしい台詞は言わなくなった
「ったく、朝っぱらから発情してんなよな」
「隆樹といる時はいつも発情しているよ」
「…………またパンチ喰らいたいのかアンタ」
グゥにした拳を見せると、苦笑いで謝罪して朝食を食べ始めた
俺も呆れて溜め息を吐くと席に座って朝食を取る
あれから二年、コイツのせいで俺は振り回されて今に至る訳だが……あの頃の事を忘れた訳ではない
中学の時、俺は既に汚れていた
色々な奴とヤッて金を稼いでその日その日をやり過ごす毎日だった
だからコイツと出逢った時もそうしようとしていたのに…コイツはその日俺とヤる事はしないでただ”話す“だけで終わった
話しただけだから別になんもないし、金だってちゃんと払ってくれた
……片手に余るくらい
最初は教師だなんてお断りだと思ったし、学校にバレたとも思った
なのにコイツは、学校に何も言わなかった
俺が生徒だって分かっていた筈なのに
何か裏があるのかと疑いの目で監視していたのに、学校では親しく話し掛けるような事をして来なくて
寧ろ、あれは別人の奴だったのかもと思う程に何もなく一週間になろうとしていた時
またゲイバーに現れたんだ
『やぁ、一週間振りだね。覚えてくれてるかな?』
『………覚えてるよ』
『それはとても光栄だね。じゃあ、今日はまた私だけに構ってくれないかな』
学校に居る時とまるで別人のように身だしなみがきっちりしている
伯爵のようなエレガントのコイツの姿と、学校で見かけるボサボサで眼鏡を掛けたダサい教師とは思えないくらい
だが、その辺の奴の相手をするよりは金も体力の無駄もしないから正直言って楽だった
『別にいいけど』
それから週に一回は通い始めてくるようになって、俺も次第に楽しくなって来ていた
そこから色々あったけど、コイツに告白をされて俺は迷う事なく告白を受け入れていた
愛とか恋とかはよく知らないし、できるか分からなかったけど
コイツなら、コイツとならできるかもしれないと思えた
いや、今でもそう思っているんだ俺は
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