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三話
学校に着けば、いつもとなんら変わりない日常があって…ダチと挨拶したり、昨日のテレビの話をして笑ったり、ふざけあったり…なんて事は俺にはない
教室まで誰とも話さないし、教室にいてもそれは変わらない
そもそも俺にダチは居ないんだ
家族もダチも恋人も作らないと決めてからは、人と話す事とか関わりを持つ事とかはしないと決めた
……まぁ、今は恋人はいるけど
それでも他のは今まで通り変わりはない
「オラー、ホーム始めっぞー」
口の悪い担任が教室に入ると賑やかな声はおさまり、生徒の名前を次々に言って返事をする
「月城隆樹ー」
「…はい」
「おっ、今日は朝から居るじゃねぇか。体調はいいのか?」
自分の番になって返事をすると、そんな事を聞かれて俺は面倒くさそうに頷くと担任はまた何もなかったように出席をとる
というより、朝から居ないのは多分…アイツのせいで体調が悪い訳じゃない
けれど、普通の男子よりは丈夫じゃないのは否定しないが
高校入学したての頃、俺は体調を崩して倒れた事があった
気付いた時には保健室に居て、何故かアイツも居た事の方が驚きで気分が悪かったのなんて忘れていた
そもそも何でアイツがこの学校に居るんだと思ったけど、問い詰めたら「コネで来ちゃった」とかふざけた事を言っていたのを今でも忘れない
そこまでして俺と一緒に居たいのかと口に出そうになったが、言えば答えなんて分かりきっているし…何されるか分かったモンじゃないと出かけた言葉を飲み込んだ
(…アイツも物好きだよなぁ)
教室の窓に視線を向けてボゥっと空を眺めていると、だんだん眠たくなってきて俺は睡魔に抵抗せずにそのまま眠りについた
休み明けの月曜日は、何故だか無性に眠たくなる
それで結局、体調不良じゃないかと思われて保健室に行く羽目になるんだが
今日はちゃんと授業を受けてやった
一時間目を除いてだけど
だって仕方ないだろ、社会とか好きじゃないし
でも二時間目は体育で外で野球をしたし、三時間目は国語をした
四時間目は……記憶が曖昧だが、数学をした
勉強はできる方で、いつも学年の上位にいるから周りはあんまりしつこく言ってこない
だから、休みがちでも文句は言われない
…アイツを除いてはな
お昼休みになるとクラスは賑やかに食事をし始めて、俺はというと教室から出て迷う事なく保健室へと向かった
「…雅先生はいますかー」
「ああ、居るよ。今日はちゃんと授業受けたんだ?」
「当たり前だろーが。これでも学生なんで」
残念そうな顔をして明らかに落ち込むコイツこそが、今の俺の恋人である北条雅だ
朝から教室に居ない日は大抵この男のせいな訳で、好き好んで朝のホームに出ない訳じゃない
「それで?お昼休みにわざわざ僕に会いに来てくれたのかな」
「白々しいな、アンタ…弁当取りに来ただけだ。朝またワザと渡さなかったな?」
「ん?何のことかな。僕は純粋に渡すのを忘れちゃっただけだよ」
明らかに嘘だと思わせる笑顔を浮かべる雅に俺は溜め息を零した
俺も俺だが、コイツとの同棲を隠しているから時間はズラしていて先に出るのはいつも雅だった
人が着替えてる間に弁当ごと家を出て行きやがってと内心思う俺だが、流石に慣れて来たので素直に諦める
こういうのを月に二~三回される
防ごうにも弁当は雅が作るし、いつされるか予測出来ない為に防げないのだ
で、こういう時は大抵決まって一緒に食べる
多分だけど、こうして一緒に居る時間を作りたいんだろうなと俺の勝手な予想だ
だから仕方なく、一緒に食べてやるんだ
……別に、嫌とは思ってない
ただ単純に…こうゆう感じのは慣れないだけで
「ほら、早く食べないとお昼休み終わっちゃうよ?」
「……ん」
それに、コイツの弁当は冷めてても暖かい気持ちにさせてくれるから……結構好きなんだよな
本人には言わないけどね
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