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EP.15
ベッドに座った泉帆の前に座った海は、膝の間に身体を割り込ませデニムの上から指で撫でる。てっきりすぐにしてくれると思っていたのだが、海はすりすりと頬擦りまでしてじっと見上げて来た。
可愛い。と思わず声を漏らしそうになり慌てて口を塞ぐ。何を言おうとしたんだと自己嫌悪しながら、泉帆は海と視線を合わせた。
「直接がいい?」
「……うん」
「ズボンの下でびくんびくんしてるね、我慢できないんだ?」
「っ、ぁ、海くん……」
鼻先を擦り付け、そのままに歯を立てられ反射的に腹筋が揺れた。早く触れてほしい。泉帆がその状態で限界を迎えそうになっていると、漸くフロントホックに手をかけ寛がせてきた。
ゆっくりとジッパーを下げ、下着ごと押し下げれば勢いよく欲が跳ねる。
早く、してほしい。泉帆が吐息を漏らし見下ろしていると、海は今まで見たことのない表情を浮かべまたキスをしてきた。まるで、慈愛に満ちた聖母のような笑み。いつもの蕩けた甘い笑みではない。
両手が絡みつき、上下に扱かれるだけで我慢させられ続けていたためにすぐに軽く達してしまう。水音を立てながらも両手の動きは止まることがなく、視界いっぱいには海の長い睫毛が映り続けた。
「ん、ん……」
スプリットタンが口腔を蹂躙し、起き上がっていることすらできなくなる。次第に腕の力も抜けて海に押し倒されるような形になり、全てを好きにされてしまった。
泉帆自身の体液で滑つく手が服の下に入り込み、胸の尖りをカリカリと刺激された。別にそこは何も感じないのに何度も触れられ、変な気分にもなってきてしまう。鼻から吐息が漏れ、まるでそこに触れられているから気持ちいいなんて錯覚まで。
何より、上下に何度も扱かれ根元の膨らみを握り込まれていたことで、勝手に腰が揺れてしまっていた。こんなこと、一度だってない。
「くろちゃん、もうイきそう? ね、イっちゃう?」
「い、く、もう……っ…」
「まだちゅーしてたい? 舐めてほしい?」
かぷかぷと唇を何度も噛み、限界を迎えそうな欲の先端を人差し指でくるくると撫でまわす。泉帆がもう何も満足に言えなくなっているのもわかっていてなお、豊満な胸を腕に押し付け甘ったるい声色で問いかけてきた。
「ねーぇ、どっちがいーい?」
自分が望んでいるわけじゃなく、あくまで泉帆が望む方を。責任を押し付ける形で顔を至近距離に近付けたまま待たれ、その甘い顔立ちにすら自我が焼き切れる。泉帆は海の頭を両手でがっしりと抱え込み、自ら深くくちづけた。
「んんっ!?」
驚き、海は思わず泉帆の肉欲から手を放してしまった。泉帆はもう何も考えられなくなり、必死に海の唇を貪る。
欲しい。この子のことが、どうしても。他に方法なんてわからないから、ただキスをした。
突然のことに動けていなかった海も、次第に辿々しくも荒いキスを受け入れ始めた。舌を絡ませ、瞳も潤み思考も蕩け泉帆が求めるままになる。
呼吸が苦しくなり唇が離れる頃には、互いに唇の端から唾液が零れてしまっていた。それほどまでに激しかった獣のようなそれに気分を良くした海は泉帆を見下ろし、うっとりとした表情で甘い声を漏らした。
「おれが主導権握ってたかったのに、くろちゃんのいじわる」
「……海、くん」
「ちゃんと、口でイかせてあげるからね」
限界に近いところで寸止め状態にされていたそれが、たった数十秒前まで自分と情熱的なキスをしていた海の口腔に含まれる。下品な水音を立てながら、喉奥に突き立てるような愛撫。あっという間に咥内へと欲を爆ぜさせてしまい、海は唇の端から唾液と混ざり合わさった白濁の液体を指で掬い舐めながら、ごくりと嚥下した。
まだ芯の残る肉棒を舌で舐めて綺麗にし、最初に少しだけ出てしまい肌にかかっていたそれも全て舐めとってからベッドに横になりまた身体を寄せて来る。
耳許で話しかけながら、手はずっと達したばかりで敏感な泉帆のそれを撫でたまま。
「くろちゃん、フェラした後でもちゅーしていいタイプ?」
「うん、いいよ」
「やったぁ。ね、気持ちいいの好き? まだしたい?」
「好き、だけど」
「じゃあ後でまたしようね。……ね、ちゃんと、友だちでいてくれる?」
確かめるように、唇を指でなぞってから触れるだけのキスをしてくる。
友達ならしないことばかりをするのに、そんな質問。それでも、海が望むなら。
自身を撫で回しているのとは反対の手に嵌めていた小指の指輪にキスをしながら、泉帆は小さく笑った。
「海くんは、それがいいんだろ?」
「うん。ありがと、くろちゃん大好き」
これまでと同じような言葉を告げられ、そしてこれまでと同じ言葉を返す。
「勘違いするから、あんまり言わないようにね」
「……くろちゃん以外には言わないよ」
でも、特別にはならないし1番にもならない。もう一度は想いを伝えてしまったから、海は真っ直ぐに自分の好意を口にしていた。
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