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影を追う
それは突然だった。
仕事の帰り道、ラブホから出てくる圭が見えた。それも男を連れて。
見間違えかと何度もしたが、それはやはり圭だった。
何かの間違いであって欲しいと願いながら、家路に着いた。
「おかえり〜」
ラブホ前にいたはずであろう圭はなんでもないような顔して、ソファに座っていた。
「ただいま」
なんだか居心地が悪くなってそそくさと部屋に入り、部屋着に着替える。
先程のことが事実ならば圭ははっきりと自分に告げるはずだ。そうグルグルと自分に言い訳をしながら部屋を出る。
いつも通り隣に座ろうとするが、圭は入れ替わるかのようにソファを立とうとする。まさか。思わず腕を掴みソファに戻す。
圭が動いた瞬間に香るいつもと違う匂い。
「圭、お前ラブホにいただろ」
堪えきれず口から漏れ出た言葉。腕に力がこもる。
圭は少し黙って、苦笑いをした。「ごめんね」と小さく呟いて、再びソファから立とうとした。
それをさらに押さえつけて、ベッドに引っ張っていく。そんなの絶対許さねえよ、逃がさねえよ。
「..もう10時か」
そばに置いておいたスマホを手繰り寄せて、時間を確認する。
ついでに来ていたメッセージも。
(ごめんね、今までありがとう、すごく幸せだったよ、ほんとにごめん)
スマホを元の位置に伏せる。グッと堪えようと唇を噛むけれど、耐えきれず涙を零す。
俺は必死にこちらを向かせようとした。けれど圭はこっちを見ようとしなかった、目は合っていたはずなのに。
「..ちっ」
傷つけてやればよかったと、今さら嘆いたところでもう遅い。
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