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第2話

レオの記憶は、段ボールの中から始まる。 生まれて間もなく凍てつくような雨に打たれ、空腹と寂しいという気持ちだけを知った。 何も分からないまま命を費やそうとしていたところ、ずぶ濡れのレオを抱き上げてくれたのは馨だった。 『寒かっただろう可哀想に。俺の所においで。温めてあげる』 懐に入れて貰った時の安堵は言葉に表せられない。 自分以外の体温を知り、なぜか無償に寂しくて泣きたくなったのを覚えている。 瞳から雨よりも大きな粒を溢れさせ、爪を立てて見知らぬ男にしがみついた。 『そんなに鳴くなって。もう大丈夫だよ』 馨はしとどに濡れた毛並みから雫を追い払うように、何度もレオの背中を撫でた。 暖かくて大きな手。 鼻先を擽る唇。 頬を重ねてくれる肌。 神様に出会ったと思った。 馨が拾ってくれた瞬間から。 レオが初めて馨を見た時から。 馨はレオの全てになった。

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