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友だちだから大丈夫.4

「ひっ」 「気持ち悪いか?」  ちょん、と指先で突かれたかと思うと、すぐに凌平の大きな手がオレのそこに絡みついた。  つい震えた喉が零した音に、凌平は気遣わしげにそう尋ねてくる。  気持ち悪いほうがよかったのかもしれない、とオレは思う。握りこまれた、それだけなのに。  驚くほど気持ちがよくて参っている。 「な、んだこれ……すげーきもちい……」 「ほんとか?」 「うん……凌平の手、オレよりでかいし熱いな」 「っ……じゃあ続けるぞ」  いつの間にかオレはベッドに横たえられていて、腰かけただけの凌平が器用に手を動かし始める。  凌平が言った通り、人の手に触れられるのは自分で処理するのとは天と地ほどの差があった。  浅い呼吸を繰り返しながら、凌平こそ嫌じゃないのだろうかと心配になる。  視線を上げると、けれど視界は凌平のもう片手に塞がれてしまった。 「純太、こっち見んな」 「え、なんで」 「なんでって……男にされてると思ったら萎えねぇ? 何か妄想でもしてろ」 「妄想、って……そんなの、ねえもん」 「は? 自分で抜く時はどうしてんの?」 「どうって、なにが」 「好きな奴のこととか、えろいこととか考えたりすんだろ、普通」 「好きな奴、いねえ、し、えろいの、見たことねえ、し」 「…………」  ジョギングをしたばかりだからか、やけに熱い凌平の手にどうにも感じ入ってしまうのに。  視界が真っ暗でオレはぎゅう、と心臓が狭くなるような寂しさを覚える。  その間も凌平の手は的確に快感を与えてきて、先走りのせいで次第にぐちゅぐちゅと音がし始める。 「じゃあ誰でもいいからさ、想像してみ」 「は、なにを?」 「誰かにこうやって触られてるとこ。好きなアイドルとか……もいなかったか。まあとりあえず、俺じゃない誰かだな」 「なんでだよ、りょ……あ、んぁっ!」 「ここが良いみたいだな」  ゆるゆると扱いていた手が膨らんだ下までおりて、そこを撫でてまた上がってくる。  みっともない声が恥ずかしいのに止められない。  いつも頭を撫でてくれて頼りがいのあるあの手が、今はオレの体液に濡れてこんなところをいやらしく触っている。  他の誰かを想像しろと言われたって、オレの頭は凌平でいっぱいだった。 「な、りょーへ、も、やばい」 「…………」 「凌平? あ、ん、はぁっ、なんか言えよぉ!」  それなのに凌平はぱったりと何も喋らなくなる。  視界を失った今頼りだった声まで聞こえなくなると、寂しさは一気に膨らんでしまう。 「も、凌平!」 「あっ」 「へ……、な、なに、その顔」 「……こっち見んなっつったろ」 「だ、って!」  目元を覆っていた手を強引に避けると、そこには眉間をくしゅっと寄せた凌平の顔があった。  目元が薄らと赤くて、ふうふうと短い息を繰り返していて。  触られているのは確かにオレなのに、凌平まで気持ちがいいかのような、そんな顔だ。  寂しさではち切れそうだったオレの胸は、凌平の表情に何故かきゅんきゅんと甘く疼き始める。  避けた手をそのまま引き寄せ、ぐずぐずに乱れた声を零す自分の口に押し当てた。  そしてもう片手を、まさかと思いながら凌平の股間に伸ばす。 「おい、純太」 「りょうへ、も、勃ってんじゃん」 「っ、ばっか、手どけろ……」 「や、だ、共犯になるって、りょーへいが、言った!」 「純太……」 「凌平も一緒に、がいい……な? たのむ。も、オレ、出そう」 「――……っ!」  掴んでいる凌平の手に今度は縋るようにかじりつく。  甘噛みをしながら、すぐそこに迫っている吐精の予感と凌平も共にとの願いで視界は潤み出す。  考え込んでいた凌平がそんなオレを見て意を決したように身を乗り出したが、凌平のきつく張ったそこに触れていた手は取り払われてしまった。

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