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友だちだから大丈夫.5
「俺はいいから」
「な、んでだよぉ!」
「ほら、こことか良くね?」
「あっ、んぁっ、や、ば、凌平、りょーへい!」
「ん、気持ちいいな?」
「うん、うん、すげ、きもち、いっ」
はぐらかされるのが悔しくて、ちゃんと抗いたいのに。
扱いていた手が今度は先端を包むようにあてがわれるから、いよいよ抵抗が叶わなくなった。
この突き抜けるような快楽に身を委ねて、早く放ってしまいたい。
次第に腰が揺れ始めて、その光景に羞恥に苛まれる。
「も、むり、イ、きそ」
「ん、いいぞ」
「凌平、あ、りょーへい、こっち来て」
「あ、おい、純太っ」
それでもやっぱり、触らせてはもらえなくてももっとそばに近づきたかった。
オレは必死に背を浮かせて凌平にしがみつく。
今の今まで凌平の手を食んでいたから口寂しくて、今度は凌平の首にくちびるを押し当てた。
漏れ出る声が熱く湿った肌に染み込んでいく、それだけで脳みそがとろけそうだ。
「りょーへい、りょーへい、」
「っ、くそっ!」
「っ、あ! あ、イ――……っ!」
悪態をついた凌平が、やけくそとでも言うように片手でオレの背中を抱きしめる。
その瞬間、オレはぶるぶると大きく震えた。
みっともなく腰が揺れ、熱い液体が放たれているのがぼんやりとした頭でもよく分かった。
どろりとしたオレの精液があの凌平の手に――見る勇気はなくて、でも想像してしまったそれに喉からはまた甘く崩れた声が漏れ出る。
「は、はぁ、凌平、オレ、オレ……」
「ん……大丈夫か?」
「大丈夫、じゃない、かも……は、ぁ、すげーこと、しちゃってんじゃん」
顔を上げられないまま凌平にしがみついていると、高い体温が溶け込んでくる。
考えなければならないことがあるのに、昨日の疲れも相まってこのまま意識を手放したくなってきた。
「りょーへい、どーしよ、オレ、眠くなってきた……」
「ん、後は平気だから寝ろ。まだ疲れてんだろ」
「でも……」
「大丈夫だから。な? 今日は部活も休みだろ?」
そうじゃない、オレが気がかりなのは自分のことじゃなくて凌平のことだ。
熱いからだと途切れたままの凌平の吐息がなにを意味しているか分かっている。
同じことをしてやりたいのに。
さっき自分はいいと流されてしまった事実と、吐精したことで気だるいからだに引っ張られてしまう。
それでも、と思っても、あの優しい手が今度は頭を撫でてくるのだからどうしようもない。
「凌平……」
「ん?」
「オレも、おまえに、やさしくしたい」
「……ふ、いつもしてもらってるよ」
「そうじゃねー……」
「もういいから。早く寝ろ、な?」
「あー……ほんと、ごめん、マジおちそ……」
「ああ。おやすみ」
起きたら今度こそ、と薄れてゆく意識の中で念じながら、促されるまま重たい瞼を閉じる。
面白いくらい一瞬で眠りに落ちたから、オレは知る由もない。
くちびるに傷がつきそうなほど歯を立てた凌平が、オレに額を擦り寄せたこと。
それからトイレに駆け込んで、痛いほど猛ったそこを扱いてたっぷり募った欲情を流したこと。
その時に何度も何度もオレの名を囁いていたことも。
友達だから大丈夫、だなんて。魔法のようで悪魔のような囁きが、夢の中でもオレの頭をぐるぐると回った。
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