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お前とだから大丈夫.3
「凌平~。なー、凌平」
「んー……」
厚みのある凌平の肩を軽く揺すってみる。迷惑そうに唸るけど起きてはくれない。
くり返し名前を呼んで今度は脇腹をつつく。
寝ているのに筋肉がしっかりついているのが分かって、指先じゃなくて手のひらを置いてみる。
しっかり筋トレしてる凌平は見るからにがっしりとした体形で腹も割れている。
でも触ったことはさすがになくて、筋肉を確かめるように撫でていると。
んう、となんだか可愛い声を出しながら凌平のまぶたがゆっくりと開いた。
「んー……純、太」
「起きた? おはよ」
「は……うわー、俺寝てた?」
「うん。二十分くらい?」
「マジかー。とりあえず風呂に……」
ちょっとうたた寝しただけなのに、凌平は悔しそうに顔をゆがめた。
それから立ち上がろうとした腰を何故だかもう一度おろし視線を彷徨わせる。
何故だか、とか言ったけどオレには分かってる。勃っていることに気づいたからだ。
どうにか取り繕おうとしている凌平を、オレはまた布団に頭を預けて覗きこむ。
「なぁ凌平、今日はオレがしてやろっか」
「は? なにを」
「なにをって……抜いてやろうか、それ」
「っ、は……!? お前……馬鹿言うな」
オレに気づかれているなんて思いもしなかったみたいだ。
それ、と指差しただけで凌平はびくりとからだを跳ね上げた。
それから目を大きくして、呆れたみたいなため息をつく。
えー……オレが馬鹿なら凌平だって馬鹿じゃん。
「凌平だけには言われたくねー」
「なんでだよ」
「凌平がオレにしたことじゃん。だからオレもすんの」
「いや、要らない」
「イヤだ、する」
「だからいいって」
「……なんで」
「なんで、って。てか見られただけでもダメージだから。勘弁して」
凌平が頑なに拒むから、オレは段々悲しくなってきた。
オレだってお前に出来ることはしてあげたいのに。
それにそんなに嫌がられたら、あの日のオレが虚しくなる。
簡単に言いくるめられて、友だちに抜いてもらって、あまりの気持ちよさに寝落ちして……?
無理強いはよくないと分かっているけど、多分オレは受け入れられたいんだ。
オレが凌平に気を許しているのと同じくらい、凌平もそうだったらいいのに、って。
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