12 / 49
お前とだから大丈夫.7
何を言っているのか微塵も分かりませんとでも言うように、きょとんとしている凌平に急激に腹が立った。
オレがどんな日々を過ごしてきたか、その元凶のコイツは知らないんだ。
言わなかったんだから当たり前でも、それってすげー虚しい。
オレはこんなに凌平のことで頭がいっぱいだったのに、凌平の中にはあの日のオレはちっとも、本当の本当に残っていなかったのか。
それなら一から百まで教えてやろうとオレは腹を括った。
恥ずかしいだとか、男子校あるあるだもんなとかオレがおかしいのかも、とか。
そういうのはもうどうでもいい。
「あの時さ、おかずとかないって言ったじゃん」
「うん」
「今は違う。もうずっと、凌平にされたあの時のことばっか考えて抜いてる」
「…………」
「てかさ、たまった時に抜くだけでよかったのに……思い出したら勃つし。すげー困ってる」
「っ、」
引いてんのか知らないけど、凌平は慌てたように口元に手を当ててオレから目を逸らした。
むかつく、すげーむかつく。だから言うのやめてやんない。
「それに何回も思い出して抜いてたら、お前が触らせてくれなかったのやっぱり腹立つなっつうか、悔しい? っつうか。凌平の触りたかったなって、だんだんそういう妄想になって。なんかこの体勢、それ思い出して……それで赤くなった、そんだけ! な? お前のせい! だから……なあ凌平、引くなよぉ……」
勢いがよかったのは途中までで、オレの言葉は次第に尻すぼみになった。
鼻の奥がツンと痛んで、慌てて顔を背けた。
下半身裸で何を今さらと思わなくもないが、恥ずかしいものは恥ずかしい。
だけどオレはすぐにそれどころではなくなってしまう。
凌平がオレの頭のすぐ横にぼすんとおでこを置いたからだ。
抱きしめられてるみたいで、なんだろう、もっと泣きたくなってしまった。
「なんてことないわけねーじゃん」
「……え?」
「あるあるっつったけど、俺だって誰ともしたことねーし」
「え……え! あれ嘘!?」
「いや、嘘じゃねぇよ。俺はないってだけ。ダチとそういうことするとかムリだし」
「えー……オレってなんなん?」
「純太が気まずくないように普通のふりしてただけ」
「おい無視すんなー?」
ともだちにシェアしよう!