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お前とだから大丈夫.9

 腹筋に力をこめて起き上がる。また凌平に触ろうとした、それなのに。  オレの筋力はあっけなく凌平の手に押し負けてしまった。  さっきみたいに覆いかぶさって、なあ、と低い声と一緒に凌平の目がオレだけを見ている。 「俺に触る妄想して抜いてたんだっけ?」 「えー……それ蒸し返す?」 「うん。で、詳しくはどんな妄想?」 「は? いや言わないし!」 「なんで? それって純太の願望じゃねーの?」 「え……?」  願望じゃねーの。  たったそれだけの言葉に、オレはハッとした。  妄想なんて自由なんだから、それは確かに願望が反映されるものなのかもしれない。  凌平に自分も触りたい、そう思った知識の浅いオレの妄想は、馬鹿の一つ覚えみたいに同じシーンをくり返していた。  あれがオレの願望? 「こんなやって押し倒されて? そんで?」 「……っ」 「俺にどう触って、純太はどうやって気持ちよくなんの?」 「あ……そ、れは……」 「なあ純太、全部同じようにするから。そうしたい。純太」  多分とんでもないことを言われている、分かっているけど凌平があのえろい目で優しく笑ってみせるから、オレの頭は混乱しているんだと思う。  恥ずかしいくせに、オレの口からは引きずり出されるみたいに凌平にしたいされたいと願ってしまったことが零れてゆく。  嬉しい、と思ってしまっている。 「……凌平、が、前みたいに抜いてやろうかって、触ってきて」 「うん。抜いてやろうか?」 「あ……っ、」 「ん。それで?」 「それ、で、オレも触りたいって言ったら、いいよって、触らしてくれる。りょ、へい、こっち」 「うお」  凌平の背中を引き寄せる。  近づいた分だけ触りやすくなるからこのくらいがちょうどいい、妄想の通りだ。  凌平のかたくて大きくて、ぬるついたそこに触れながらオレは自分のシャツを胸元まで捲くった。  そのままだと汚れてしまうと思ったからなんだけど、凌平は目を丸くしてお前なぁ、と呆れたような顔を見せた。 「純太お前、前も思ったけどさ、チョロすぎ。心配なんだけど」 「なにが? 意味わかんない」 「はぁ……それになんつうか、近すぎる」 「なんだよイヤかよ」 「いや、イヤじゃねぇ。じゃねぇけど……」 「だってオレ、そういうのしか知らねぇもん」 「そういうの?」 「こんなえろいことみんながしてると思わねぇじゃん。普通、付き合ってるヤツらがすることだろ?」 「まぁそうだな」 「だからその、甘ったるいもんだと思ってんだよ、恋人? だろ。こういうことすんのは」 「……俺らがそういう風にしてる妄想してたってこと?」 「うん」 「それで抜けんだ?」 「うん……だから、もっと、こっち」

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