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全然大丈夫じゃない.1
『全然大丈夫じゃない』
秋の終わりに枯葉が転がるアスファルト、見てるだけでも寒い外を横目に、夕陽が射すファーストフード店は学生だろう人たちでそれなりに賑わっている。
例に漏れず高校生のオレらも、部活終わりのくたびれた体を引きずってやって来た。
みんなはしょっちゅう来てるしオレも以前は毎回参加してたけど、今日は久しぶりでテンションが上がる。
どちらもLサイズのメロンソーダとポテトを持ってテーブルにつくと、寒いのによくそんなん飲むよな、と先に座っていたチームメイトのタクが目を丸くした。
「オレ飲み物は冷たいのが好きだし」
「お子ちゃまだなあ純太は」
「じゃあタクはなに飲んでんだよ」
「コーヒー」
「うわ大人」
「だろ」
他の仲間たちもやって来て四人掛けのテーブルが綺麗に埋まる。
「「そんなんで競ってる時点でふたりともお子ちゃまだよ」と言われ、言葉に詰まったタクにみんなで笑った。
気心の知れた同い年のチームメイトは、一緒にいるだけで楽しい。
このメンツが集まればまず話題に上がるのはサッカーのことだ。
今日の活動内容を中心にああでもないこうでもないと真面目に議論し、それが尽きればやはり男子高校生と言うべきか。
女の子の話だとか、いわゆるエロい話だとかに移る。
そういう話題があまり得意じゃないオレは冷め始めたポテトに集中する。
オレの性分をみんな分かって放っておいてくれるから気が楽だ。
それなのにオレはつい、自分から話題に入ることになる。キスという単語が聞こえてきたからだ。
「キス……」
「お、どうした純太。お子ちゃまもついに興味が湧いたか?」
茶化してくるタクをあしらいながら、オレはポテトをもうひとかじりして考え込む。
こんなことを聞いてしまえば不審がられるだろうか。
でも、他でもない凌平が“あるある”だって言うんだからそこまで驚かれはしないかも。
ずっとずっと胸にひっかかっていることを解決したくて、オレは藁にも縋る思いだった。
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