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全然大丈夫じゃない.7
「電話かかってくる前、してたんだけど、オレ、イけなくて……」
『っ、』
電話の向こうでかみ殺された息が、遠く離れたオレの耳にやって来る。
まるで一緒にいるみたいだ。
そんな錯覚が羞恥心を奪って、みっともなく醜態を晒す。
なあ凌平、オレひとりでイけない。凌平がいないとダメになっちゃった――
ぐずぐずと崩れた声でそう言うと、今度は慌てた足音と扉が閉まるような音、それからガチャンという金属音が聞こえた。
『お、前なぁ……』
「凌平?」
『部屋からいちばん遠いトイレに来た。純太のそんなん聞いて……むりだろ』
「っ、りょ、へいも、触んの?」
『うん、俺もする……はは、もうすげーわ、ガチガチ』
「ひっ! や、ばい、凌平、りょうへいっ」
『ん……純太、気持ちいいな?』
「あ、あ、りょうへい、はあっ」
イヤホンから届く凌平の甘くかすれた声と、ちいさく聞こえるのはぐちゅぐちゅという濡れた音。
沸騰するような興奮にからだ中を支配されて、オレは膝立ちになって凌平のシーツに額を擦り付ける。
無意識に左の人差し指を横から食んで、ぼやけた頭で凌平のくちびるを思い描いた。
キスしたい、凌平のベロでぐにゅぐにゅってオレの口の中をかき混ぜてほしい。
「りょーへい、名前、よんでほし、」
『ん、純太……純太はなにが好き?』
「へ……好き? えっと、りょーへい?」
『…………? どんなやって触られんのが好き?」
「あ……オレ、りょうへいのといっしょに、こすんの好き」
『あー、分かる。俺も好き。俺のも純太のもガチガチで、でもぬるぬるしてて……堪んねぇよな』
「あっ、ば、っか」
尋ねられる好きを勘違いして、やっと理解して届ける好きに本当の気持ちを混ぜこむ。
俺も好き? うん、オレも好き。
夢みたいなことを考えながら、オレはぐちゅぐちゅに濡れたそこをいっそう扱き、食んでいた指を口の中に入れてみた。
凌平はどんな風にキスするんだろう。
好きな子にキスをする時、どんな風に可愛がるんだろう。
それがオレだったらどんなにいいか。
舌を捏ねていた指がふいに上あごに触れた時、くすぐったいような感覚に声が上擦ってしまった。
『純太? もしかしてイきそう?』
「りょーへい、オレ、今指くわえてて」
『……え?』
「口の上んとこ、こすんの気持ちいい、なに、これ」
『っ、』
「あ、あ、やら、りょうへいに、これしてほしい 、りょうへい、ぐすっ、りょうへいにくっつきてぇよぉ」
『くそっ、純太っ! 俺も、俺も純太に触りてぇよ、は、あ、』
「っ、はぁっ、りょうへい、オレ、も、だめ、イッちゃう、りょうへいっ、んんんっ――……!」
『っ、くっ――……』
凌平の余裕のない声にみるみると感度は跳ね上がって、腰はぶるぶると跳ねた。
いつも凌平の肌でそうしているみたいに、シーツに顔を押し付けて声をどうにかかみ殺す。
電話の向こうで凌平もイッたようで、低く唸る声にオレのそこはもう一度ぴくんと震えた。
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