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全然大丈夫じゃない.8

 とんでもないことをしちゃったなとぼんやりとした頭でも分かる。  オレたちには珍しい気まずい空気、それでもじゃあねなんて言いたくなかった。 「凌平〜いつ帰ってくんだよお」 『明日だな。言ってなかったっけ』 「ううん、聞いた」 『だよな』 「それじゃ遅いって意味」 『……浮かれそうになるからやめろ』 「…………? それはどういう意味?」 『さあなー』 「……ねえ凌平」 『んー?』  好きだよって言ってしまいたい。  オレの中で育った心を凌平に知ってほしい。  だけどそれはどうしても怖くて、言葉を飲みこむ。  こんな苦しいんだな、恋をするって。  凌平もそうだったらいいのに、オレにじゃないと嫌だけど。 「やっぱりなんでもない」 『ふ、なんだそれ』 「凌平。りょーーへーー」 『はいはい、なんだよ純太。じゅんたーー』 「あはっ! オレたちバカみたいじゃん」 『だな』 「うん。ねえ凌平」 『またなんでもない?』 「ううん。はやく帰ってきて」 『…………』 「凌平がいないとすげーさみしい、むり」 『……泣きそう』 「え、なんで?」 『なんでだろうな。なあ純太』 「んー? なんでもない?」 『ううん、俺もさみしい、純太に会えなくて』 「っ、やめて」 『え、ひど』 「だって……オレも泣きそう。あと、また勃ちそう」  こんなにこんなに会いたいのに、明日はきっとどんな顔をしていればいいか分からない。  凌平のことが好きで好きで、きっと全然大丈夫じゃない。  だから今はちょっとだけ、この遠い距離に甘えて素直になってみたい。  会いたいよ、寂しい、ほんとのほんと。  ――あと声聞くだけでまた勃ちそうなのも、ほんと。 『純太ほんと黙って』 「えー……ひどい……」 『だってお前、俺まで……どうしてくれんの』 「え……も~! 凌平瞬間移動してきて!」 『ふは、なんだそれ』 「だって……ぐすっ」 『泣いてる?』 「泣いてねーし」 『そっか。明日、秒で帰るわ』 「おねがいします」 『おう』  どんな未来が待っているのか知ることは出来ないけれど。  きっとずっと、凌平はオレの大好きな人なんだろう。  気づいたばかりの心が強くそう言うから。  凌平もそうだったらいいのにって、夢みたいなことを願う。 「あ! でももうちょっと切らないで、いい?」 『うん、いいよ』 「……凌平」 『はいはい、なに?』 「ん〜なんでもない!」

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