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それから数か月、オレたちは顔を合わせなかった。
こんなに長い期間連絡すら取らなかったのは初めてかも知れない。
同学年なのに不自然なくらい顔を合わせないのは、オレが冬馬を避けているから。彼を見かける度に隠れて遣り過ごしていたからだ。
オレは ── 冬馬と顔を合わせるのが怖かった。
彼はどんな眼でオレのことを見るのだろう。あの時の冷たい眼差し?それとも何の色も表さない瞳?
嫌われた方が楽になるなんて、そんなことある筈もなかった。
オレたちが再び顔を合わせることになったのは、ホテルで催される聖愛学園のクリスマスパーティーでのことだ。
高等部以上の生徒、教師、OBで賑わっているメイン会場で、秋穂を連れている冬馬をオレは見つけた。反射的に身を翻し、二、三歩遠ざかる。
( でも…… )
オレは立ち止まる。彼らに背を向けたまま考える。
このままでいいのか。このまま今までの長い年月を捨てて、もう二度と隣に立てなくてもいいのか。
それとも、常に傍らに秋穂がいるのを見ながら、また友人として隣に立つのか。
どちらを選んでも辛いに違いない。決めかねる。
( 賭けるか……どうするか、冬馬に決めさせる )
狡い考えだが、この後の冬馬の態度で今後を決めることにした。
オレは人垣を掻き分け、ふたりの前に立った。
冬馬と眼を合わせる。久しぶりに間近で見る顔だ。
今まで秋穂に見せていた温かな表情が一瞬にして無になる。
( やっぱり……そっちか )
オレは勇気を奮い立たせ、にやりと笑った。
「久しぶり」
いつもの、調子のいい声。オレは以前のように、ちゃんと笑えているだろうか。
( さあ、冬馬、どうする? )
ただ見つめ合うだけの時間が物凄く長いように感じたが、たぶん実際はほんの数秒のことだろう。
冬馬がふっと目尻を下げる。
「ああ、久しぶり」
あの時とは違う。笑みを浮かべてくれた。変わらない声で話してくれた。
内心は解らない。でもそれはお互いさまだ。
オレはまた冬馬の隣にいる、と決心した。
ふと見ると、秋穂が具合の悪そうな顔をしていた。
「どうしたの?」
オレは心配そうなフリで言う。
「うん、ちょっと。人が多くて」
「じゃあ、他の人の少ない会場に行こう」
オレはこの数か月がなかったようにしてふたりの間にまた溶け込んだ。
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