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不意に手首を押しつける力も、オレの熱に触れる掌も感じなくなった。
( 終わった……? )
そう思った瞬間、それは今までにないような、温かく湿った感触に包まれた。
( なに……? )
視線を下げると、オレの股に顔を埋めているハルの短い髪が見えた。
ハルがオレのを口に含んでる。
「……やめっ。ハル、やめてっ」
そう懇願すると、彼は口を離した。上目遣いにオレを見ている。その瞳には、隠しようもない情欲の色が浮かんでいた。
「ははっ。流石に、これはないんだ」
半勃ちのそれを手で支えながら、今度はオレに見せつけるように、舌で舐め上げる。場所を変えながら、何度も何度も。
「ん……っ。あ……っ」
遂にオレの口から、けして漏らすまいと思っていた声が零れた。
自分でも気持ち悪いとさえ思う、色を含んだ声。
縛られた手でもハルを殴ることはできる。でも、オレはそうはしなかった。
**
懇願は一度だけ。その後は流れに身を任せた。
ハルが冬馬に似ているからか ── オレは、今でも冬馬にこうされたいと思っているのだろうか。冬馬から貰った紅紐で縛られ、オレは冬馬に縛られているように感じてしまっているのか。
それとも。
ハル ── 普段は無口で、余り表情を見せない。性というものを想像させないストイックさがあると思っていた。
そんなハルに熱を帯びた眼で見られ、言葉で責められ、触れられて、オレはこんなも熱くなってしまっているのか。
実際はかなり手慣れているようだ。
オレのを舐め上げたり、含んだりを繰り返しながら、器用にスラックスを下着ごと落とし、自分もシャツを脱いで上半身裸になった。
綺麗に筋肉の付いた美しい肉体だ。硬そうな胸と、割れた腹筋。
冬馬の身体を思い出す。
「ん……。はあ……」
吐息とともに、熱を帯びた声が零れる。もう、押さえ切れない。
半勃ちだったそれは、もう完全に勃ち上がっていた。されことのない愛撫が、覚えのある感覚を呼び起こす。
「だめ、もう……っ。ハル、口、離して……っ」
縛られた両手で弱々しく頭を叩くが、ハルは止めなかった。
「ん~~~~っ」
オレは背を反り返らせ、唇を噛み締めながら、ハルの口の中に欲望を放った。
「だ……から、言ったのに……」
ハルが顔を上げる。
唇を結び、少し頬を膨らませているハルは、オレの放ったものを口に含んでいるようだった。
ハルは口を開き、唾液と混じって泡立ったそれをだらっと流し、掌で受け止める。
「何、やって……っ」
羞恥と驚きで、それ以上言葉が出てこなかった。
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