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 そのぬらぬらと濡れた手で、オレの、まだ誰も触れたことのない場所に触れる。オレがハルの口に放ったものを、周りに塗りたくっているような感覚がする。  そうしながら。 「俺、橘さんに似てるらしいですね。俺には、全く分からないけど」  大きくついた溜息に微かな憤りを感じる。 「あんたも、そう思ってるんだろ。時々、そういう眼でオレを見てた。再会した時も ── つっても、あんたにとっては初対面同然だろうけど、あん時も酷く驚いた顔をしてた。ファインダーを通しても、ずっと俺じゃない誰かを見ているような気がしていた」 「ハル ── っつう」  話をしながらも、ハルの手は止まらない。  痛みと共に、未知の場所に侵入してくる、ごつごつとした細長い何か。ハルの指だろう。ゆっくりと押し入ってくる。 「でも、俺は橘冬馬じゃない、藤名遥人だ。俺は、あの男の身代わりにはならない。今、シウさんの眼の前にいるのは、この俺だ」  意思の強い瞳が、オレを貫く。  冬馬が望むなら、繋がりたいと思ったあの頃。オレは秋穂の身代わりでもいいと思った。  でも、ハルは冬馬の代わりにはならない、と言う。  そして、オレ自身を望んでくれることに、オレは流される。 **  ゆっくりゆっくりと内側を掻き回されている。今までに経験したことのない感覚。  また、指が増やされる。一本で慣らされたそこに、また痛みが走る。 「ん……あ……ん」  でも、次第に痛み以外の別の感覚が呼び起こされる。痛みと共に背筋をゆっくりと昇ってくる何か。  二本の指で掻き回しながら、ハルは、一度放った後のそこをやんわりと握り、ゆるゆると扱き始める。  両方への刺激がまた未知の感覚を生み、萎えたはずのそこにまた熱が溜まっていく。  オレの口からは、自分でも押さえられない甘い吐息が漏れる。  ハルはオレの内の指を外さないまま、半勃ちのものからは手を離し、少しずつ上の方へ身体をずらしていく。  唇が腹を這い回り、大きな手が胸をまさぐる。紅く色づいた頂きを、カリカリと引っ掻いたり、摘まんだりを繰り返す。何処も彼処も敏感になってしまった身体は、刺激を受ける度に、全身に鳥肌が立つ。    これが、快感というものなのだろうか。  オレには、SEXの経験がない。冬馬以外には何も感じなかったからだ。他の誰かとしたいとも思わなかった。  でも、今ハルにされて分かることは、やっぱり冬馬としてきたことは、子どもの悪戯に過ぎなかったということ。  強引だが、愛されている感覚は、心をも熱くしていく。  真実彼にこの行為をされるのが嫌なら、オレの身体はこんな風に感じたりはしないのではないか。  まして、心を熱くするなんて……。

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