86 / 123
─ 11
「ごめん、シウさん。もう我慢できない」
ハルは胸許で苦しそうに囁くと、身体を離した。オレの内に入った指も抜き、自分のスラックスの前を寛げた。
ふうふうと荒い息を繰り返している。
そういえば、大分前から熱くしてたなと悠長なことを考えたが、ハルの屹立が眼に入った途端、オレは怖じ気付いた。
「ま、待って、ハル」
「待たない」
余裕なく言って、オレの両膝を掴み左右に押し開く。今まで誰の眼の前でもしたことがない、恥ずかしい体勢だ。
再び頭を擡げたオレのものも、その後ろも、ハルの眼に晒されているだけでなく、彼のそそり立つものが後口にあてがわれているのが、オレの眼からも見えてしまっている。
オレの身体は羞恥と怯えで、今まで慣らされてきたのが無駄と思える程、固く強張った。広げられた穴もきゅうっと締まったような気さえする。
それでも。
ハルは構わず、ぐっと力を込め、オレを押し開いていく。
「……いっっ」
今までの比にならないくらいの痛みと圧迫感に、言葉にならない叫びを上げる。
「きつっ」
ハルの口からも声が漏れた。
やはり入れる方も痛いのだろうか。そっちの経験もないオレには分からない。
「シウさん、もうちょい力抜いて」
と言いながら、ぐぐっともう一回力を込める。
更に痛みが増し、涙が滲みでる。
( そんなこと言われても。どうすりゃあ…… )
痛みとハルの言葉で頭がぐるぐるしていると、腰の動きを止め、ハルがその身を重ねてきた。
顔が間近に迫ってくる。
ぺろりとオレの目許を舐め上げると、「しょっぱ」と言って微笑んだ。
じっと、色違いのオレの眼を見つめる。
「この綺麗な瞳も好きだけど」
と言いながら、そこから視線を離し、
「この口許のほくろも、色っぽくていい」
今度は口許をぺろりと舐める。そして、ちゅっと音を立てて、唇にキスをした。
こんな恋人みたいに、抱かれながら甘い言葉を言われるのは初めてで、胸が擽ったくなる。
その短いキスは、さっきの強引なキスよりも何かくるものがあった。
ハルはオレの肩口に顔を埋めた。
「シウさん……」
吐息のような酷く甘い囁きが耳を掠める。
「お願いだから、俺を受け入れて」
その言葉にオレは、「えっ」と小さく声を上げた。
ふふっと笑う声がする。
「まだ、全部入ってないんだ」
( マジか…… )
こんなに痛みも圧迫感もあるのに、全部入ってないなんて。
「俺、もうイっちゃいそうなんで……。別にこのままでもいいんだけど……。できれば、シウさんの奥まで入りたい……」
しおらしい声でも、言ってることはあからさまで、それがまたオレをぞくぞくさせる。
ともだちにシェアしよう!