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 少しだけ自分の身体から力が抜け、半勃ちのものも徐々に育っていくのを感じた。 「シウさん……」  もう一度名を呼ぶと、しっとりと押し包むように口づける。強引さはなく、最初の時のようにゆっくりと唇を舐め、甘噛みをし、割れ目を舌でつつく。 ( 余裕ないくせに…… )  オレは薄く唇を開いた。  オレが自ら受け入れたことで、ハルの顔に嬉しそうな笑みが浮かぶ。  その顔を見てから、オレはゆっくりと眼を閉じた。  口内を動き回るハルの舌。熱く優しくまさぐられる。歯列と共に唇の裏側をなぞられ、口蓋からその奥の柔らかな部分まで、余すところなく舐められる。 ( 気持ちイイ……。キスって気持ちイイんだ…… )  強引にされ、ただ苦しかった時とは違う。勿論、自己満足の為の冬馬とのキスとも。  舌をつつかれ、絡め取られると、オレの頭は真っ白になった。全身の力が抜け、ふわふわと宙に浮くような感覚。  唐突に、新たな痛みと圧迫感に襲われた。ハルがぐっと腰を押しつけてきたのだ。  彼は唇を離し、 「ありがとう、シウさん」  と言うと、身体を起き上がらせた。オレの両膝を押さえて、ゆっくり腰を動かす。 「あ……っっ」  痛みはもうそれ程ない。  ハルの動きが思ったよりもスムーズなのは、彼の先から滲み出るもののせいだろう。  限界も間近なのかも知れない。  それはオレも同様だ。オレの熱は完全に熟し、先から雫を滴られせている。  次第に早くなっていく動きに、何度も何度も背筋を甘い痺れが駆け上り、全身を粟立たせる。 「ん……っ。あっ……あんっ!!」  オレはもう声を我慢しない。 「ハル、ハル!オレ、もう、イキそうっ!」  オレの膝を掴んでる手にぐっと爪を立てる。 「うん、シウさんっ」  ハルががばっと倒れ込んで、オレの身体をぎゅっと抱き締める。やにわにその身体がびくっびくっと震え、内側に熱いものが注ぎ込まれる感触がした。  その刺激でオレも達し、密着した二人の腹を濡らした。  はあはあと肩で息をしていたハルは、やがて静かになり、全身の力を抜いた。  オレにかかる重みは変わらないが、その抱き締め方が優しい。  彼の下でオレも呼吸を整えた。  抱き締め合う体温の気持ち良さを感じながら、オレは、滲む視界の先に朝の光を見た。 **  どれくらい眠っていたのだろうか。  上半身を起こし、壁掛けの時計を見ると、既に正午を過ぎていた。  ベッドの上にはオレしか居らず、ハルの姿は部屋の中にはなかった。 「帰ったのか……」  ぽつんと零れた言葉に、やや不満気な音が滲んでいたことに自分でも驚き、ポリポリと頭を掻く。  気を失ったも同然のオレの身体を綺麗にしてくれたのは、ハルだろう。  しかし、ボックスシーツには情事の痕跡が残っていた。

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