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第2話
「おい、陸」
剛を自宅まで送り届け、次に俺の家まで向かってくれて。
丁寧に礼を述べて車を降りようとしたら、大介さんに呼び止められた。
「おまえ…いい加減、ケリつけろよ」
見つめた大介さんの眼差しが、鋭く俺の心に突き刺さって。
逃れるように目を逸らす。
「なんのこと?」
「わかってんだろ。翔月のことだよ」
「ケリってなに?大介さんには関係ないだろ」
「陸っ!」
全てから逃げだそうとする俺の腕は、強い力で引き留められた。
「いつまでウジウジしてんだよ。いい加減、ちゃんと向き合ったらどうだ」
「…向き合うもなにも、相手がいないんじゃ仕方ないでしょ。勝手に…俺の前から消えちゃったんだから」
「違う。向き合うのは自分の心だよ」
「…え…?」
「翔月じゃねぇ。おまえは、おまえ自身はどうしたいんだ?その答えを出さなきゃ、いつまで経っても前に進めねぇぞ」
「俺の、答え…?」
「自分の意思で、自分の道を決めるんだよ。それが大人になるってことだろ?」
翔月が、じゃなくて。
俺が、どうしたいか…。
そんなの
考えなくったって答えは出てる
「なんだよ、わかってんじゃん」
クスクス笑って、大介さんは白い封筒を俺に差し出した。
「俺からの成人のお祝いだ。向こう行ったら、翔月によろしくな。たまには帰ってこいよって、伝えてくれ」
封筒の中には。
ニューヨーク行きのチケットが入っていた。
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