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第3話

ハドソン川に程近い、古めかしいアパートのドアの前で、俺は大きく深呼吸した。 心臓が口から飛び出そうって、ホントにあるんだな…。 何度も深呼吸を繰り返し、それでも緊張は解れなくて。 だけどいつまでもここにいるわけにはいかないし、と意を決してチャイムを鳴らそうと手を上げた瞬間。 ガチャリとドアが開いた。 「えっ…陸…?」 現れたのは 会いたくて 会いたくて 会いたくて 会いたくて 堪らなかった人 血の繋がらない、たった1人の兄 そして……… 「…なん、で…?」 驚愕に見開かれる切れ長の瞳。 少し長めのさらさらの黒髪。 優しげな微笑みを浮かべる唇は、今は驚きに小さく開かれていて。 3年ぶりにみた姿は、記憶の中とあまり変わらなくて。 それが余計に、あの頃の俺たちを呼び起こしてくれた。 なにも、変わらない。 あの頃と、なにも。 俺の翔月への、気持ちも…… 「…会いに、来たんだ」 「…ダメ、だよ…」 「翔月に、会いに来た」 「ダメだって!だって俺たちっ…」 「じゃあ、なんであんなことしたんだよっ!」 翔月の喉が、ヒュッと音を立てる。 「なんで、好きだって言ったの?なんで、俺を抱いたの?なんで、黙っていなくなったの?なんで、なんでっ…」 その後は、言葉にならなかった。 ただ溢れる涙を拭うことも出来ずに立ち竦むだけで…。 「…陸…ごめん…」 そんな俺を、翔月は顔を歪めて見つめていた。

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