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第2話
「おはよう」
「おはよう」
玄関のドアを開けると、毎朝同じ人物が出迎えてくれる。小学校からの幼馴染みである矢 吹 博 人 だ。博人とは腐れ縁で、小学校から高校になった今まで、一度もクラスが離れたことがない。ここまでくると、ある意味『神業』だ。
「眠っ……」
「また、遅くまでTVでも観てたの?」
「だって、野球の試合が延長、延長でなかなか終わんなかったから」
「博人は、本当に野球が好きだよな」
「当たり前じゃん。でなきゃ、こんなに続いてないって」
「まあ、確かに……」
眠そうに欠伸をしながら右手にスクールバックを持ち、大きく両手を挙げて伸びをしている博人は、小学校から少年野球をしていて、高校になった今も野球部に入っている。一年ということでレギュラーになるまでにはまだ時間はかかるだろうけど、本人は大好きな野球をしていることが楽しいみたいだ。
野球少年だからか、小学校の頃からずっと坊主頭なのに、生まれつき持ったくっきりとした目鼻立ちにスポーツや勉強も卒なくこなすこともあり、女子からはモテる。
それに引き換え、山 本 悠 哉 は特に目立つこともない平凡な男子高校生。スポーツがずば抜けて上手いわけでも、勉強ができるわけでもない。どちらかというと、周りからは『矢吹の隣にいる奴』という認識だろう。
そんな二人が出会ったのは、小学校の入学式の日だった。名前順で決まっていた教室の机。自分の名前を探し当てて着席した後ろの席に座っていたのが博人だった。仲良くなるのに時間は掛からず、気がつけばいつも一緒にいた。
「さぁ、今日も頑張るかー」
「どんな気合の入れ方だよ」
「いいの、いいの。こうでもしなきゃ切り替わんない」
「そうとう眠いな……?」
「眠いんだって」
「はいはい」
伸びをした後に、グッと拳を握って気合を入れるのも、毎朝の恒例行事みたいなもの。そうすることで、本人曰く、眠気を吹っ飛ばしているんだそう。軽くあしらうように返事をしながら、悠哉はスタスタと学校へと向かう。その後ろから自分のペースで続いてくる博人。こんな日常が続くと思っていた。
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