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第4話
「博人。おい、博人」
「んっ……」
「授業終わったぞ」
「はっ、マジ? 俺、爆睡してた……」
「完全にね」
「教科書忘れた上に、爆睡って……。完全に終わった……」
「間違いなく、千本ノックだね」
「いやいや、谷口先生には、後で泣いて謝らなきゃだな」
「頑張れ」
「おい、他人事かよ」
「だって、俺、関係ないもん」
「ひっでぇ……」
頭を抱えながら血相変えている博人を横目に、悠哉は国語の教科書を片付けると、昼ご飯を買うために購買へ行こうと立ち上がる。
「ちょっ、どこ行くんだよ?」
「昼飯買いにだけど?」
「俺も行くって」
「だったら、いつまでも頭抱えてないで急げよ」
「おう」
自分の机を急いで元に戻すと、先を歩く悠哉の元へと駆け足で追いついて来て、ガシッと後ろから肩に腕を回してくる。その勢いに思わず体がよろけそうになったのは、博人がしっかりと体をガードしてくれていたおかげで免れた。
「争奪戦か?」
「さあね。でも出遅れたし、場合によっては在りつけないかもね」
「やっべぇじゃん! 急げ‼」
肩に回されていた博人の腕が離れたかと思えば、あっという間に悠哉よりも先に走っていく。負けじとその後を追いかけて走り出し、目的とは違う昼食を何とかゲットすると、そのまま二人はいつものように購買よりさらに奥にある廊下を突き当りまで歩いていく。その右側に旧校舎と繋がるための階段があり、腰かけた。
「うん、美味い」
「目的とは違うけど、完売になってなかっただけ良かったかも……」
「そうだな。食べ物に在りつけただけでも良しとしよう」
「ったく、誰のせいだと思ってんだよ」
「俺、だろ?」
「当然‼」
「言い切ったな」
「そりゃ、言い切るでしょ」
パンを頬張りながら、二人して大笑い。誰にも気を遣うことなく、こうして二人で過ごす時間がとても居心地が良くて、すごく楽しくて、悠哉は好きだった。
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