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2012年 夏……④
「いいんですよ、松岡先輩」
竜平は、松岡に向かってきっぱりと告げると、直人の方を向き直った。
「実は俺、プロダンサーを目指してたんです。でも、高校入学前に交通事故に遭って、足の関節をやられたんです。医者には、本格的にダンスを続けるのは諦めろと言われました」
そんな、と直人は思った。さらに、松岡が補足する。
「中学時代には、もうバックダンサーとして活躍してたんだぜ。将来性間違いなしって言われてたのに……」
「……ごめん」
申し訳なく思い、直人は頭を垂れた。だが竜平は、意外にもかぶりを振った。
「いいんですよ。ある意味事故は、いいきっかけになったと思っています。あの時に俺、自分の進路を考え直しましたから。それで、演出家を目指そうと決めました。元々、振付や構成を考えるの、好きでしたし……。第一、失った物のことを考えていたら、時間がもったいないじゃないですか」
竜平は、真っ直ぐな瞳で語っている。強がりではなく、心底そう思っているのが感じられた。
(時間がもったいない、か……)
その言葉は、高校受験の失敗を引きずっている直人の胸に響いた。
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