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2012年 夏……⑤

 以来三人は、定期的にカラオケボックスに集まるようになった。松岡は、女性に人気の懐メロをマスターすると張り切っている。その練習に竜平を付き合わせると聞いて、直人は自分も協力すると申し出た。彼と会って話す機会を、逃したくなかったのである。 (好き、なんだろうか……)  松岡にコーチしている竜平の横顔を盗み見ながら、直人は思った。こんな風に物事をポジティブに考える人間には、初めて出会った。いつも快活な竜平と接しているだけで、直人は心が洗われる気がした。  とはいえ直人は、その気持ちを認められずにいた。昔から、女性には興味を持てなかった。自分はゲイなのだろうかと疑いつつも、自覚するのが怖かったのである。  その日直人は、竜平と二人でカラオケルームにいた。松岡が、急用で来れなくなったのだ。お詫びにカラオケ代をおごるから、二人で歌ってくれ、と彼は言っていた。 「今日は、思いきり好きな曲を歌いましょう! いつも、松岡先輩の練習に付き合ってばかりですもんね」   竜平は上機嫌だが、直人は緊張していた。狭い個室で、二人きりだなんて。何かの拍子に自分の気持ちがバレたらどうしよう、と直人はひやひやした。 (きっと、気持ち悪がられるだろうな。それに、噂になったりしたら、親はショックを受けるだろう……)

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