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第15話 渇望
抱いたのは『渇望』だ。
好きなんてそんな優しいものじゃない。欲しくて欲しくて、正常な判断なんてつかなくなるような、そんな感情だ。
「はっ、あぁっ、っ」
そう、正常な判断なんて、つかない。
「ンっ……」
「っ、っ、っ」
「ンくっ……ん」
ミツナを始めて見たあの日から、ずっと――。
「はぁっ」
リビングのフロアで座り込んでいるミツナは背中を丸め、俺の手の動きに合わせてビクンっと跳ねた。手の中には熱くてガチガチに硬くなったミツナのがあって、扱く度に先端から透明な液が滲んで指が滑る。
「悠壱っ」
ミツナのカウパーで指が滑る。
「っ」
息をキュッと止めた瞬間だった。何度か手で扱いただけで達した。
「はぁ、はぁっ、クソっ、全然収まんねぇ」
媚薬、って言ってたっけ。多分、興奮剤みたいなもの、なんだろうな。
手の中にあるそれは達したばかりなのに、まだ熱くて硬いままだ。
「ミツナ」
「へーき、もういいから、マジで帰れって。あんたはこういうの知らなくていいことだ!」
熱くて、硬くて、ひどく敏感で。
「本当に冗談になんねぇから、っ……おいっ!」
自然と喉が鳴った。自然と、その場で、背中を丸め、うずくまって。
「俺に触っ、!」
口に咥えた。
「お、いっ……悠壱」
咥えて。舌をその熱に添わせると口の中で跳ねている。
「やめっ」
「ン」
何度か舌をその熱の塊に添わせて撫でただけで、また今にも弾けそう。それを構わず唇で扱いてから、先端に口付けたまま見上げた。
信じられないよな。こんなの、フツーしないよな。でも、今は媚薬ってやつの、せいだから。
「俺を使っていい」
「っ」
「こんなの、病院行ったりなんてしたらスキャンダルになるんだろ? なら、俺を使って吐き出せば」
媚薬のせい。俺はそれを治す手伝いをしているだけ。そうしておけばいいよ。
気にしなくていい。これは俺がしたくてしてるんだ。そして、また口で頬張ろうと、ミツナのペニスの先端を口に咥えた瞬間。
「っ!」
その熱は弾けて、唇と頬にかかった。
「あっ……」
小さく声をあげて、俺はその放たれたミツナのを舌で……。
「クソっ」
「ン、んんんっ」
後頭部をミツナの手が抑えて、そのまま口を開いた俺はずぷりと咥えさせられた。ミツナのを。
「ン、ん」
慌てて舌で舐めながら自分からも頬の内側で扱くように吸い付いて。
「はぁっ、はぁっ」
しゃぶりつく。
「悠、壱……」
その声で名前を呼ばれただけで胸が躍った。
「っ、はぁっ」
息を乱しながら、俺の口の中で跳ねるそれに丁寧にしゃぶりつくと、ミツナの指が俺の髪をくしゃくしゃに掻き乱す。あの、長くて綺麗な指先が。
そのことにひどくゾクゾクした。
「っ」
俺の舌の動きに合わせてミツナが顔をしかめるのが嬉しかった。だから一生懸命に舌を這わせて、その熱を頬張って、したこともない行為に夢中になっている。
「出、るっ」
「ン、ん、ンん」
「おいっ離せって、出るからっ」
出していい。俺の口の中に。
「悠壱っ」
ミツナの。
「悠壱っ!」
引き剥がそうとするミツナの手を押しのけるように、口いっぱいに頬張って、自分から深くしゃぶりつくと、まだ媚薬のせいもあるんだろう力の入らないミツナの手がぎゅっと俺の頭を抱えた。そして、口の中でペニスが暴れたと思った瞬間、口の中にミツナのが放たれていく。
「……ン」
ミツナの、熱。
「はぁっ、はぁっ、クソっ」
ミツナの。
「バカ、あんた、何して」
「ン、あっ」
顎を持ち上げられ、口から引き抜かれた拍子に、たらりとミツナの吐き出したものが溢れてしまう。それを急いで舌で舐めとると、ミツナの指がその舌を撫でた。今さっき、ミツナのペニスを咥えていた口の中を指で弄られてる。
「ン」
「マジで、帰れ」
夢中になってペニスにしゃぶりついていた顔を見られてしまう。
「ん……」
「俺に、犯されるぞ」
きっとひどい顔をしている。
「言ったからな、俺は」
だって俺は。
「悠壱」
自分から男であるミツナのを口に咥えたんだ。
「俺を使っていい」
「っ」
「ミツナ」
自分から大喜びで、フェラをしてた。
「手でも口でもなんでも、全部、使っていい」
「あんた自分が何言ってんのか、わかってんの?」
自分からしゃぶりついた。
「わかってるよ。ちゃんと」
自分から。
「わかってる」
懇願したんだ。
女じゃないから、乱暴にしてくれて構わないと言ったら、苦しそうな顔をしながらも笑っていた。何言ってんの、と笑って、そして、フローリングに押し倒された。
ミツナが女性とスキャンダルになっていたのは何度も見かけたから、セックスの相手にはならないかもしれないけれど、それでもミツナに触れられるのならって自分から身体を広げたんだ。
バックにしてくれって頼んだ。その方がまだ男女の差を誤魔化せるかもしれないって思ったから。胸はないし、女性にはないものがついてるのは、萎えさせてしまうだろうって。
ミツナは……萎えてなかった。振り返って確認して、少しホッとした。媚薬のせいなんだろうな。
「悠壱?」
「なんでも、ない、は、あっ……はぁ」
セックスの相手にはならない身体をあの指で抉じ開けられる。
「せっま……」
苦しくて呼吸が何度も止まるのに。
「あぁぁっ」
それがたまらなく嬉しくて、あのミツナの指が自分の中を抉じ開けてるって思うだけで、腹の底が熱くなる。
あの指が、今、俺の中にある。
「ひっ、ぁっ」
ほら。ただ、それだけで。
「っ! なっ、にっ」
ミツナの指が何かに触れた。
「すげ……」
「あ、あ、あっ、ミツナっ」
「ここ?」
「あ、あぁぁあぁ」
それが指先で撫でられるだけで、身体を電気が駆け抜けるようだった。快感が走り抜けて、頭の中が真っ白になっていく。
「あ、あっ」
「っ」
「も、いい……から」
「悠、」
「これ」
手を伸ばして背後で苦しそうにずっと硬いままのそれに手で触れると、痛みが走ったのか、ミツナが顔をしかめた。
「すごい、熱い」
「っ」
「まだ、こんなに」
媚薬の効果がまだ効いてる。じゃないと、こんな男相手に、こんなふうにならないだろ。
「はっ、ぁっ、頭、バカになりそ」
なってくれたらいい。そしたら、俺なんかの身体でも抱けるだろ?
「今、濡らす、から」
そして、ミツナのペニスにまたしゃぶりついた。唾液でそれを濡らしてる。
「すげぇ、エロい眺め」
言いながら、ミツナが俺の髪をかきあげて、咥えてる口元を指先でなぞってくれる。その指にもしゃぶりついて、ペニスにもしゃぶりついて、どっちも濡らしてく。
そして濡れた指が、柔らかく解した中を弄ぶように浅く出入りして。
「ん、ん」
たまらなかった。
「ミツナ、早く」
「……」
早く欲しくて。
ゴクリと喉を鳴らしてしまう。
「俺の身体を使っていいから」
知らないだろうけど。
「ミツナ」
俺は、望んでたんだ。
「早く、使って」
この美しい男がずっと。
「……悠壱」
ずっと、欲しくてたまらなかった。
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