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第22話 本物

 あの晩、ミツナを食い入るように見つめていた。少しも忘れないように。こんな時はこんな顔をして、こういう仕草をするんだと、記憶に刻みつけたくて。  だって、二度目はないと、思っていたから。 「あっ……」  もう一度、抱いて欲しいと願っていたけれど、それは絶対に叶わないと思っていた。 「あっ……あぁっ」  ほぐしてくれる指が抜かれる瞬間、ぶるりと震えてしまう。あの晩よりも優しい指に。あの晩よりも丁寧な指先に。 「悠壱」 「んっ」  また、できるなんて。 「ミツナの、口で」  彼に抱いてもらえるなんて。 「またしてくれんの?」 「!」  そう言って笑ってくれたミツナに、一瞬で頬が熱くなった。 「あんたの口の中、すげぇ気持ち良かったよ」 「っ」  ちゃんと覚えていてくれてるんだって。ただそれだけでも俺にとってはすごく嬉しいことで。  ベッドの端に腰を下ろしたミツナの足元に座り込んで、下着をずり下げた瞬間、飛び出てきたそれに目を丸くして見つめていると、ミツナが苦笑いを零した。ちゃんと俺相手に素面で反応してくれてる。あの時みたいに異常な性欲で強制的に吐き出すためじゃないのに、ちゃんと。 「あんま見つめられると恥ずかしいんだけど」 「だって」  伏し目がちに口付けた。 「勃ってくれてる、から……ン」  咥えると、じゅ、って音を立ててしゃぶりつく。 「は、ぁ」 「ン」 「当たり前、じゃん」  先端を舌で撫でながら、くびれたところを唇で丁寧に咥えて、もっと喉奥ギリギリまで迎えながら、竿を唇で扱くと、前みたいに、後頭部にミツナの手が添えられた。 「悠壱、もっと」 「ん、むっ」  そのままもっと奥まで咥えて。しゃぶって。 「悠壱ってさ……普段と、セックスの時、全然違うよね。っ、そこ、すげ……」  話しながら時折、息をつめて感じてくれている。その場所を丁寧舐めてしゃぶりつくと、名前を呼ばれた。前髪をかき上げられて、慌てて視線を逸らした。 「こっち見てよ。悠壱。しゃぶってるとこ、見せて」 「……」 「っ、すげぇ、エロい顔」  ゾクゾクしてるんだ。咥えて奉仕しているのはこっちなのに、このペニスを咥えてることにも、この後、このペニスを奥に。  そう思うだけで、身体の奥がキュッと切なくなってる。そんなところを見られて、恥ずかしさに俯いてしまう。 「あと少し遅かったら、あんた、そんな顔しながらしゃぶってたの?」 「ン……あっ」 「そんな物欲しそうな顔しながら」  口からペニスを抜かれて、一生懸命にしゃぶりついていた唇の端がだらしなく濡れてしまった。それを指で拭われて、ゾクゾクしながら、その指にもしゃぶりついていく。 「やば……」 「ン、んっ……ン…………あっ」 「エロすぎ」  じっと見つめられてると、奥が疼く。 「目、閉じてる」 「は?」 「もしも、あのままあのカメラマンとするんなら、目、閉じてる」 「……」  ミツナの切れ端を思い出すために、目を瞑って、あの晩まで記憶を戻すことに必死な顔をしていたと思う。 「誰でもいいわけじゃなくて」 「……」 「少しだけ、似てたから」 「……」 「だから、OKしたんだ」 「どこが似てた?」 「あ! いや、ほとんど似てない。というかミツナに似てる人なんてそうそういないだろ」  こんな綺麗な男、そう簡単に見つかるわけがない。見つかったとしても、そんな男が、俺みたいな普通の男を抱こうなんて絶対に思ってはくれないだろ? 「ね、どこが似てた?」 「あ、えっと……髪型と、指」 「それだけ?」  指が長くて、骨っぽかったから。ほら。このミツナの指に似て。  そう思いながら、その指にキスをした。 「っ」 「! ミツ、っ」 「なんなんだ、あんた」 「ぇ? あっ」  ベッドに引っ張り上げられ、そのまま組み敷かれる。そして、まだ俺の唾液まみれに濡れたペニスが尻の肉に擦り付けられて。 「煽りすぎ」 「あぁっ」  いやらしい期待に声が震えた。 「待ってて」 「ぇ? あっ」  ゴム、するのか。 「悠壱?」 「あ、いや……」  前は、しなかったから。なんか。 「ゴム、するんだなぁと」 「中出しされんの好きなの?」 「っ」 「あんた、エロい」 「ぇ? っ!」  うなじにキスをされながら、ペニスが柔らかく解された孔を。 「悠壱」 「あ、あっ……あ、あっ」  抉じ開けていく。 「あっ……」 「っ」  ミツナを中で感じてる。 「せっま……」 「ン……」 「やば……悠壱ン中」 「あぁっ」 「気持ちいい? 中がすげーんだけど」 「あ、あ、あっ」 「動くよ?」  くちゅりと音がした。 「あぁっ」  引き抜かれて、またゆっくりと抉じ開けられると、その押し広げられて身体の奥までいっぱいにされている感覚に指先まで痺れるくらいに感じてる。 「はぁっ」  嬉しくて。  気持ち良くて。 「あぁっ、ミツナっ」 「っ」 「あ、あ、あっ」  中が満たされて、気持ちいい。 「ミツナっ、あっ、あぁぁっ」  奥を少し強く突き上げられて、背中を丸めて感じていると、そのうなじにミツナが歯を立てた。 「やぁあっ」 「っ、締め付けんなよ」 「あ、だって、気持ち、いっ」 「っそんなに気持ちいい? 俺のこと、そんなに欲しかった」  まるで答えるように孔がキュッとミツナを締め付ける。そして中がそのペニスに大悦びして、絡みつく。 「ずっと、こう、されたかった、から」  もっとズブズブに貫かれたいと背中をくねらせてしまう。 「はぁっ」  もっと奥までミツナのが欲しいと。 「やらしい身体」 「あぁっ」  貫かれながら乳首を背後からつねられて、たまらなく気持ちよかった。もっと抓って欲しくて、胸を反らして、その指を求めてしまう。そして、もっと抓られて、爪の先でカリカリと引っ掻かれて、蕩けそうなほど気持ちいい。 「あ、あ、あ、あ」 「ねぇ、答えてよ。そんなに俺のこと欲しい?」 「っ、あ、ン……欲し、かった」 「っ」 「すごく、あっ!」  ずるりと抜けてしまった。ミツナのペニスに奥までいっぱいに抉じ開けられて気持ち良くなっていた身体はその喪失感に孔をヒクつかせてしまう。 「ミツナ? あの」  貪欲すぎただろうか。欲しがりすぎて、引いたかもしれない。そう思って、振り返ろうとしたところで深いキスで息が止まる。 「……ン、ン」  舌を差し込まれて、絡みつくように弄られながら、脚を恥ずかしくなるほど開かされた。 「あっ」 「顔見てしたくなった」 「あ」 「ね、俺の挿れられたらどんな顔するのか見せてよ」 「あぁっ」 「俺ので気持ち良くなってるとこ、見せて」 「あ、あ、あぁあぁぁぁっ」  はしたないほど脚を開いて、ヒクつく孔にミツナのペニスを充てがわれて、そのままズブズブと奥まで一気に抉じ開けられて、達した。 「っ、あっ…………」 「挿れられる時、そんな嬉しそうな顔しながらイくとか、あんたさ、エロすぎ……」 「んんんっミツナ」 「はい。これが本物」  言いながら、唇を指がなぞってくれるから、またそれをしゃぶって。綺麗な髪をかき上げ、その端正な顔を見せつけてくれる。  俺の中を行き来しながら、たまに眉をひそめてる顔を。  そして、俺は、真正面から見つめられながら、達したばかりの顔を見られ、偽物じゃない、本物のミツナの指にしゃぶりつきながら、打ち付けられる熱にずっとずっとイッていた。指先まで痺れるほどすごく気持ちいい射精に蕩けていた。

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