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第26話 虜
夜、仕事を終えたミツナと一緒に部屋に戻り、そこで夕食を共にして、また翌朝、合鍵で部屋を訪れ、ミツナを起こして、その日の仕事場へ――そんな日々がまた始まった。
ただ、そこに一つ、項目が加わった。
「あっ……はぁっ……あっ」
セックスを、する。
背後から攻め立てていたミツナが中でドクドクと熱を吐き出すのを感じながら、達してしまう。いつもは布団の上にかけられているマルチカバー、それを俺の下に敷いてもらって、くしゃくしゃに握りしめて、甘い吐息混じりに彼へ口付けた。
「っ、はぁ……悠壱」
「あっ!」
ゴム越しでもわかるくらいに俺の中で射精してくれたことが嬉しくて。中で脈打つその感覚に悦んで、ずっと長くイった快感が尾を引いている。それが締め付けでバレてしまったんだろう。ミツナが背後でクスッと笑って、小さく、中をクンと突き上げてから俺の名前を呼んだ。
「気持ちいい?」
「あ、ン……」
身体の作りが変わっていくような感覚。
男なのに、こんな女性みたいな声を上げてしまうようになった。
初めて抱いてもらった時は苦しさの方が圧倒的に多かったんだ。それでもミツナに抱いてもらっているっていうことが嬉しくてたまらなかったから、それが快感に繋がっていた。でも、今は――。
「悠壱の中、すごいよ?」
「あぁ……ぁ、あ……」
「気持ちい……」
「あ、ミツナっ」
「ね」
「あぁ、今、イッタばっかりっ」
「悠壱……」
うつ伏せで寝転がった状態で、奥を小さく小刻みに突き上げられて、達したばかりの身体はどうにかなってしまいそうなのに。
「あぁっ」
ミツナの手が逃さないっていうみたいに、下に敷いたカバーを握りしめる両手をしっかりと掴んで、捕まえて、何度もいいところばかりをまだ硬いままのペニスの切先で追い立てる。
「あ、あ、あ、あ」
また、イク。
「悠壱」
また、中を貫かれる快感でイってしまう。
「見せて、やらしい顔」
「……ン……ん」
「イク時の顔も」
「あっ……ぁ、イク、イクっ」
名前を呼ばれて振り返ると齧り付くようにキスをされた。
深く、深く、ペニスで奥を何度も貫かれながら、舌を絡め合うとたまらなくて。
「あっ、あぁあっ」
そのままミツナの指に乳首を抓られた刺激と一緒に達していた。
そしてまた抱かれる快感を身体が覚えていく。
「あっ……ン」
知らなかった快感が身体に刻まれていく。
シャワールームの鏡に映る自分をじっくり見てしまう。
あちこちにミツナがつけたキスマークがあった。
「こんなところにも……」
この口付けられた箇所全部が自分の性感帯なんだと。
「……ン」
ほら、自分の指でそこをなぞると甘い疼きが小さく生まれる。
女性とセックスをしていた頃とは全く違う身体に思えた。キスマークがこんなふうにつくこともなかったし。こんな場所を触られても何も感じなかったのに。
「っ」
抓られるとたまらない。
「ぁ……っ」
指先で潰されるようにされると、それだけでゾクゾクする。
「はっ」
あの舌に舐めてもらったら、もう――。
「足りなかった?」
「!」
その声に飛び上がって振り返ろうとしたら、いつの間にか背後に立っていたミツナが洗面台に手をついて、俺に覆い被さるように抱きしめた。
「一人で帰らすの大変だと思ってタクシー呼んであげたのに。こんなところで、乳首いじって」
「……ン」
「悠壱がしんどくなるかもって思って、俺、セーブしたんだけど」
「あ、違っ」
「その必要なかった?」
クスッと笑ったミツナが首筋にキスをくれる。そして、俺のうなじにまた一つキスマークが増えていく。
「ね、悠壱、ここに服とか持ってきなよ」
「え?」
「いちいち帰らないでさ。どうせ、また明日の朝、ここに来るんじゃん」
朝、自宅を出て、ミツナの部屋へ向かい、合鍵を使ってマンションに入り、ミツナを起こす。そのままマネージャーが車で拾ってくれて、一緒に移動をして、ミツナの仕事風景を撮影する。そして、夜はマネージャーにミツナと一緒にマンションまで送ってもらい、一緒に部屋へ戻り、夕食を共にして、
「そうしなよ」
セックスをして、シャワーを浴び、俺は自分の自宅アパートへ帰る。
「悠壱」
もうシャワーも浴びたのだからとそのまま自分のベッドで眠って、起きて、朝、自宅を出て――。
そんな日々を送っている。
「ここで暮せばいいじゃん」
身体の作りが変わっていくようなんだ。
男なのに、こんな女性みたいな声を上げてしまうようになった。知らなかった快感を知った。それはとても気持ちが良くて、夢中になってしまうほどの快楽で。
冷静に考えることすらできなくなるような快楽で。
「ね? 悠壱」
もっと欲しくなるほど甘美なものだから。
「ん、あっ……ミツナっ」
「中、欲しかった?」
「あっ、ぅ……ン」
「ずっとこの中に挿れてたい」
「あぁぁっ」
嬉しそうに微笑みながら俺を抱くミツナに、バスルームで立ったまま貫かれて悦んでしまうんだ。
普通なら、以前なら確実に戸惑って、断ることを考えていたはずなのに、今はその提案に頷いてしまうほど。その快感の虜になってしまった。
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