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第29話 近く

 モデルをしているミツナは綺麗で凛々しい。皆が知っているのは、このミツナ。  プライベートな時のミツナは少し子どもっぽくなる。これは、スタジオで一緒に仕事をするスタッフは知らないけれど、マネージャーやとても近い人だけが知っているミツナ。 「あっ……ン」  そして、この時のミツナは……。 「あぁっ…………」 「? 何? 見惚れてくれてんの? ホント、飽きないんだね」  ベッドの中、裸でセットされていない無造作な髪をかき上げながら、自分に跨る俺へ微笑んでくれる。 「ねぇ、悠壱」 「?」 「このまま、悠壱が自分で挿れてよ」  このミツナは色気が溢れてて、俺は見てるだけで頭の芯がぐじゅぐじゅに熟れてしまう。 「ここに」 「あっ……ン」  指で拡げられた孔。 「俺の」 「ン」 「挿れて見せて?」  内壁を撫でるように引き抜かれて、もっとしてとねだるようにヒクつくそこに、熱くて、硬い、ミツナのペニスの切先が触れた。 「ね?」  トマトソースのポークソテーが美味しいと好評だった。最初、怪訝な顔のまま一口目を恐る恐る口に運ぶミツナは面白かった。警戒している子どもみたいな顔。  そして、苦手だと思っていた青臭さの消えたそれに表情をパッと和ませて、二口目をパクリと食べてくれた。  ――何これ、めちゃくちゃ美味い。  そう言ってくれる彼はあどけなかった。  食事を終えた後は食器を片付けて、シャワールームへ二人で向かった。いつもは一緒になんて入らない。男同士だし。俺には女性のようにミツナをこの裸で興奮させられないだろうし。だから、別々。けれど、今日は一緒にシャワーを浴びた。待ってられないと言われて、口付けられたら、もう、俺は断れるわけがない。  明るくて、恥ずかしいけれど。  それでも一緒に入って、身体を洗われて。  でも、触れられたらスイッチが入るんだ。ただ撫でられただけで声が出て、その反応にミツナが面白がって、指先が悪戯をし始める。明らかに意図の違う指先に翻弄されて、すぐに感じてしまった俺はシャワールームで乳首をいじられながら一度、イかされた。  けれど、収まることなんてないんだ。むしろ欲しがってしまう。  もっと、って。  早く。  早く、って。  この硬いのが欲しい、なんて、まるで女性みたいなことを考えて。  のぼせないようにと低い温度の湯に当たりながら、そそり立つペニスの前に自分から跪いて口付けた。頬張り、しゃぶりついて、丁寧に舌を添わせて舐め回す。根本にキスをすると頭上で濡れ髪のミツナが呼吸を乱してくれる。それが嬉しくて、何度も何度も、喉奥まで咥え込んで、しゃぶりついた。  ――美味しいの?  そう、訊かれたくらい。夢中になってしゃぶってた。  頷くと、ミツナの手が頬を撫でて、深く濃いキスをくれた。舌を絡めて、唾液が唇の端から溢れるようなキス。 「あっ」  美味しいって思った。  ミツナの。 「あぁっ」  シャワーを終えたら、そのままベッドに向かった。火照った身体はもう、疼いてた。だから、言われるままに彼に跨って、そのまま、欲しくてたまらなかったペニスを充てがって。 「はぁっ」  解されて、ヒクつく孔に自分で挿れた。竿に手を添えながら、ズブズブともう何度も貫かれた身体でそれを受け止めていく。 「はぁっ、っ…………ンっ」  ミツナでいっぱいになる。 「あ、あっ」  それが震えるくらいに気持ちいい。 「あぁっ! あっ! ンっ、あっ」  そのまま自分から身体を上下させて、中を擦った。 「あンっ、あっ、あっ」  もう身体が覚えてる。これがとても気持ちいいって。深く繋がった奥もめいっぱいに拡げられる浅いところも、途中擦りられると、ゾクゾクしてたまらないところも全部。 「ぅ、ンン」 「悠壱、夢中になって腰振ってる」 「あ、だって……やあぁぁぁ」  まるで女性みたいな甘ったるい声をあげてしまう。 「あ、あ、あ」 「乳首、好き? いじると中が締まる」 「ン、ん」  そんなところで感じるなんて。女性でもないのに、そんな胸で感じたりして。 「あ、あ、あ」 「痛いのがいい?」 「あぁぁぁっ」  指で乳首を抓られると、吹き飛んでしまう。 「っ、中が、すごい……これ、気持ちい?」 「あ、うん……あ」 「言ってよ、ちゃんと、やらしく言ってみて?」  理性も。 「あっ、乳首、いじめて、欲しい」  恥じらいも。 「あ、あ、あ、あ、抓られるの、が」  羞恥心も。 「これは?」 「やぁぁぁっ、噛まれるの、あ、あ、気持ちい……ミツナの」  男なのに女性みたいに欲しがることを咎める自分も。 「この硬いので、もっと」  諭す自分も吹き飛んで。  残ったのは。 「もっと……犯して……欲し」  浅ましいくらいにミツナを夢中になって欲しがる自分。 「あ、あぁあっ」 「やばい」 「あっ!」  体勢がぐるりと入れ替わる。夢中になって振りたくっていた腰を鷲掴みにされて、奥をぐんっと強く貫かれた。 「あぁぁぁぁっ!」 「えっろ……最高」  そのまま激しく何度もペニスを奥目掛けて打ち付けられて、あられもない声が溢れて止まらない。 「あ、あ、あっ、イってるっ、ぁ! 今、あぁぁっ」 「悠壱……」 「あ、あっ」 「中、気持ちよすぎ……」 「あ、ふっ……んンンンっ」  長い射精なのか、小刻みに何度もイッているのか、もうわからないくらいぐじゅぐじゅに乱されながら、それでも手を伸ばしてしまった。 「いいよ、しがみついて」 「あ、ダメっだっ……」 「悠壱の一番気持ちいいのしてあげるから、掴まってて」 「あ、あ、あっ」  わけがわからなくなるくらい、激しく揺さぶられながら。 「悠壱」  その声に名前を呼ばれて。 「あっ、また……イクっ」  見上げると。  色っぽいミツナが抱きつく俺に笑ってくれた。 「イクとこ、見せてよ」  とても近くて、すぐそこ、息を呑む音すら聞かれてしまいそうな近くに、マネージャーさえ知らないだろうミツナがいた。

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