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第31話 「お預け」
さすがに毎晩ミツナのベッドで添い寝ってわけにはいかないだろ。
世界中の女性から妬み殺されそうだ。しかも相手が絶世の美女でもなければ、国宝級に可愛いアイドルでもない、ただのカメラマンで、年上の、しかも男。
それにミツナだって毎日毎日男の添い寝なんて、そのうち楽しくなくなるに決まってる。物珍しさを楽しんでいられるのは最初だけだ。きっと数回それをやればもうあとはでかい男の添い寝なんて邪魔で、うざったいだろうから。
だから、午後、夕方に買い物と一緒にまた服を追加で少し持ってくるついでに持ってきたんだ。
「…………何これ」
寝袋。
「夜に」
前はよく使っていたから。海外で動物の生態調査に同行したり、撮影には必需品だったから。結構防寒機能にも優れてて、急激に温度が下がるサバンナとかでは重宝していた。ひどい時で昼間と夜で十度以上も温度が変わることがあるから。
それを物置から引っ張り出して持ってきたんだ。
それを持って、買い物した食材も持ってミツナの部屋に行くと、ソファに座っていたミツナが怪訝な顔をして、そのキャンプにでも行くのか? っていう荷物を睨みつけていた。
「寝るところが必要だから」
ソファはダメだと言われた。なら床で寝るしかないだろ?
「いらない」
「でも」
「ベッドで寝ればいいだろ」
「……」
でも、それじゃあ俺は、困るんだ。
ミツナの隣で毎晩眠るのは。
「それともなんか困ることでもあんの?」
ミツナの表情が変わる。不機嫌混じりの怪訝な表情がなくなって、目を細め、楽しげににやりと笑った。見透かされてしまった。なんで困るのか、なんで男同士ただ添い寝をするだけのことにそんなに困るのか。
困る理由が、狭いからじゃなく。
男同士でむさ苦しいとかでもなく。
ただ――。
ミツナは持ってきたばかりの俺の寝袋を掴むと、そのままクローゼットにしまってしまった。
「ねぇ、悠壱」
「……」
そして綺麗に微笑んで、俺に詰め寄る。
ジリジリと距離を詰められて、そのまま背中が壁にぶつかりミツナと壁に挟み撃ちにされた。
「困るの?」
「っ」
困り理由をわかっている、とその笑みが言っている。密着した身体。耳に吐息を吹きかけられて、脚の間にミツナの長い脚が割り込んでくる。
「俺の隣で寝るの」
「っン」
そして、手が俺の背後に周り、尻の狭間を指がふしだらに撫でて、とある一箇所をクイッと押し上げた。布越しなのにそこを撫でられるとたまらなくて、俺は小さく息を止めてしまうほど。
知らなかった身体は、今は知っている。
「ねぇ?」
「ン」
ほら、知ってるから、もう身体が。
「なんで困るのか、ちゃんと教えてよ」
抱かれたいって、疼くんだ。
「あ、あ、あ、あっ」
何も掴むところのない壁をカリカリと引っ掻きながら、甘ったるい声をその白い壁に何度も吐いて。
「あぁぁっ」
強く、奥を指で暴かれると背中を反らして喘いでしまう。
リビングで、食事の支度もせずに、上は着たままで下だけ脱いで、ミツナの指に施される快楽に溺れてる。
「考えたらさ」
「ン、あっ、あン」
「すっごいエロいよね」
「あぁ、ン」
「ここ、気持ちい?」
「あ、あ、あっ、あン」
今、甲高い声をあげてしまったところを念入りにミツナが確かめるように擦ってしまう。たまらなくて、前がじわりと濡れていく。そのくらい、そこを可愛がられると気持ちが良かった。
「ね、エロくない?」
「ンっ、あっ」
服の中に潜り込むミツナの手に悦んでくねる背中を撫でられた。
「はぁ」
背後に立っているミツナの、あの長い指に背中を弄られる。それだけでも震えるくらいに感じて、中が今、咥え込んでいる指を締め付けてしまう。
「エロいと思わない? こんな場所で、こんなところ、指でされてるって。来たばっかでさ」
「あぁぁっ!」
背後から伸びてきた手が先走りを滲ませて、熱にジンジンと疼いている俺のを握って扱いて、カウパーで濡れたその指できゅぅっと乳首を摘んだ。
「あぁ……」
こんな声を出せるなんて知らなかった。
まるで女性のように突かれて、胸なんていじられて甘く啼く自分なんて。
「そう思わない? 悠壱」
知らなかった。
「ここにこんなに俺の指、咥え込んで」
「あ、あぁっ……っ」
抜かれた指で、もう柔らかくなっている孔を悪戯になぞられるとたまらなかった。
「孔、こんなに柔らかくしながら」
「あ、あ、あ」
ギチギチに隙間なんてないほどしゃぶりつきたいと、ヒクついてるそこを撫でられる。
「中がさ離さないって絡みつくの」
「あぁぁぁっ」
「ここ、すごい」
前立腺を擦られると、もう。
「やらしいよね」
早く。
「あっ……ン」
なのに、ミツナが指を抜いてしまうから、身体がもらえなかった快楽欲しさに暴れそう。
「だからさ、続きして欲しかったら」
早く、ミツナのが欲しいって。
「ちゃんと俺のベッドで寝なよ」
今すぐ欲しいって。
それなのに「お預け」なんてされたら。
「ね?」
もう準備をされた身体は今すぐにベッドにミツナを誘いたいと疼いてたまらなかった。
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