68 / 108
第68話 シー……
不思議な感じがした。俺の部屋に実紘がいることが、とても不思議だった。
「ごめんね。来て早々、とか」
「ぁっ……」
服の中に潜り込んだ手が乳首をキュッと抓った。
その瞬間、冷え切っていた実紘の指先にスイッチを押された。
ほら、身体が火照って。
「あぁっ」
実紘に抱かれたいとねだり始める。
「やりたいだけの猿みたいでさ」
「ンっ」
「まぁ、頭の出来は猿くらいかもだけど」
コーヒーを淹れようとカップだけ並べて、キッチンでまだコートも脱がずにいる。
「なんか、お隣さんと話してる普通の時の悠壱見たら、興奮した」
「は、ぁっ……何、言って」
「ちゃんとした大人でさ」
「ン、あ、そこっ」
服の中でカリカリと爪で乳首を引っ掻かれるとたまらなかった。手はもうコーヒーを淹れようとしていたこともほったらかしにして、シンクの縁を握り締めるだけ。
「常識人? っていうの? ちゃんとお隣さんに挨拶とかする大人なのにさ」
「あ、はぁっ」
「俺はこの人のやらしい顔とか知ってるんだなぁ……って、思ったら」
「あぁっ」
後ろから抱きしめられて、実紘の硬いのが当たった。それだけで欲しくなる。
「興奮した」
「ぁ……」
女性でもないのに。
「実紘」
「? ……ン」
首を傾げる実紘へ振り返ってキスをした。舌を差し込んで、音を立ててしゃぶりつくように濃厚なキスをしながら、自分から腰を実紘の硬いそれに押し付ける。
「ん、ン……ン」
まるで女性みたいに腹の底のところがキュッとするんだ。
「猿はとても知能が高い動物だぞ」
早く、彼にそこを貫かれたいと身体の奥がまるで濡れたようにさえ感じる。
「それなら、俺も、になる」
「悠、」
「ン……」
その場でひざまづいて、実紘のズボンに顔を埋めた。そして熱を持ったそれに服越しでキスをして、それからさっきまで冷えて悴んで仕方がなかった手でズボンの前をくつろげて、下着をずり下げ、それを。
「ん……む」
しゃぶった。
だって、俺は知ってる。あんなに顔を覆い隠しても滲み出るモデルの「ミツナ」が俺の中でイク瞬間にどういう表情をするのか。あんなに無邪気な笑い声がセックスの時にどんなふうに掠れるのか。どんな低い声で名前を呼んでくれるのか。
屈託なく笑うその口がどんなふうに俺の身体を愛撫するのか。
「ンん」
知ってる。
セックスをする時の実紘を。
「すげ……悠壱」
「ん……ンく……ん」
「ね、こっち見ながらしてよ」
「ん」
しゃぶりながら見上げると喉を撫でられた。ごきゅ……と音を立てて、その喉までできる限り実紘のペニスを咥えて、頬の内側でそれを扱いている。
「……やらしい」
「ん、んんんっ」
「っ」
夢中になってしゃぶりついてた。舌を懸命に動かすと実紘が綺麗な整った顔を歪ませるから。根本にキスをして、熱を溜め込んだそれを口いっぱいに頬張ると、指先が力を込めて俺の髪を掻き乱す。
「っ、ン」
甘く唸ったのは実紘。
「イク」
(飲みたい)
「飲みたいの? 俺の」
(うん)
咥えたままコクンと頷いて、まるで猫が足元で甘えるような気持ちで見上げた。一旦口からそれを離して、舌を伸ばして舐めて。
「実紘の、俺の口に……出して」
そっと、今度は丁寧に先端の丸みに口付けて、その丸みをちゅうと吸った。
「っ、クっ」
その瞬間、びゅくりと頬にも飛ぶくらいに勢いよく弾けた熱が舌へ放たれて。
「悠壱」
「あっ……」
唇にかかった分は舌で舐めとって。
「顔にかかっちゃった。ごめん」
「いや……」
「やばいね」
「?」
「本当、バカになったのかも」
まだ部屋は寒いだろ?
「悠壱」
狭いワンルーム。ベッドはすぐそこだ。数歩歩けばちゃんとそこで抱き合えるのに、それすら鬱陶しいみたいに、顰めっ面で実紘がコートを放り出した。息を乱して、しばらくぶりに入れたエアコンはまだ本領発揮には至らず寒いはずの部屋で、暑そうに息を乱して。
「あぁっ……あ、指」
「俺のかけられた悠壱の顔、すっげぇ、エロい」
「あ、あ、あ」
俺はコートを着たまま、キッチンの床に転がって、ズボンと下着だけ脱いで、脚を広げてる。
「あっ……ン」
「お隣さんに聞こえるかな」
「ど、だろ」
「悠壱の可愛くてやらしい声、誰にも聞かれたくないから、声我慢してね」
「何、言って……あぁっ、ン」
指を抜かれるだけで喘ぐ身体なのに。
「シー…………駄目だってば」
「あ……」
そんな身体にこの数ヶ月で変えたのは実紘のくせに。その実紘が悪戯を楽しむ子どもみたいに笑って、俺のうなじにキスをした。
「声、出しちゃダメだってば」
「あぁ、あっ……ぁ」
言いながら、今さっき達したばかりなのにとても硬いそれで貫くんだ。
「あ、あ、あっ……んんんっ」
「っ、中、あっつ」
こんなの気持ち良くてたまらなくなるのに。
「あ、実紘っ」
「中、トロットロ」
「ん……あ」
「俺のしゃぶりながら興奮してたんだ?」
「して、た、あぁあっ、ン」
「やらしい声……」
そんなやらしい声を出してしまうくらい抱かれる身体にした本人が困った顔をして、その唇に指を立ててから。
「シー……」
「あぁぁっ」
実紘の太いそれが、ずっと濡れたように疼いていた、引っ掻いて、突いて欲しかった奥を差し貫いた。俺はとても気持ち良くて、声なんて抑えられそうにないくらいに、奥までいっぱいにされる快感に蕩けてた。
ともだちにシェアしよう!