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第77話  一番やらしくて、一番愛おしい

「セックスなんてさ、性欲解消するためのものだった。もしくは、あのゴミ箱に帰らずに寝る場所を確保するための宿代、だったんだけどね」  実紘がそう言って寝転がる俺を、手をついて上から見つめた。 「今、は?」  問うと、顔をクシャリとさせて笑った。  その瞬間を切り取った。カメラで。 「今は、違うよ。幸せを感じたくて、してる、かな。っぷは、すげぇ、恥っず」  この瞬間も。シャッターを切る音がする度に実紘が嬉しそうにしてる。楽しみだって。 「すごいよね。あの時、偶然、声をかけなかったらさ、あんたはここにはいなくて、俺はあんたに出会わなくて……そしたらどうなってるんだろうね」 「……」  言ったことはないんだ。  ずっと追いかけてたって。 「悠壱?」  だって、恥ずかしいだろ。もしかしたら引かれるかもしれないじゃないか。いくつも年下のモデルをずっと追いかけて、いつか出会えたらなんて砂粒の中から砂金ひとつを見つけ出すような夢を、少女みたいに抱いて、カメラを持ち替えた、なんて。 「…………じゃない」 「え?」  なんだろうと、不思議な顔をした瞬間も、切り取っておこう。あんまりこういう顔はしないから。 「偶然、じゃない」 「……」 「ずっと……あの教会で出会うよりもずっと前に出会ってる」 「……え?」 「い、一方的に、だけど。何年か前に、空港近くで、路上で、ミツナを見かけた」 「……」 「その時は、多分、路上でファッションショーとかだったんだと……思う。それを見て、それで、撮りたくて、ミツナを」 「……」 「畑違いの、人を撮る分野を志望して、スタジオカメラマンになったんだ」  言うつもりはなかったんだけど。でもそれじゃ、フェア、じゃないだろ? 実紘が自分を全て曝け出してくれるようになったのなら、俺も、そうしないと、だから。 「その……だから、偶然じゃない。か、可能性は限りなくゼロに近かったけど、ずっと追いかけてた」 「……」 「ミツナのこと。いつか俺がものすごいカメラマンになれたら出会えるかもしれないって思ったり……して……」  ミツナを撮れるほどのカメラマンになれば、出会えないわけじゃないと、少女が、周囲には高望みが過ぎると笑われてしまいそうな、そんな高い、高いところにある夢を抱くように。 「だから、偶然じゃ、」 「何、それ」 「……」 「あんたってさ、本当にすごいよね」 「?」 「嬉しくて泣きそうになるの……初めてだよ」  あ。 「……悠壱は俺にたくさんの初めてをくれる」  シャッター押すの忘れた。  あまりに綺麗な涙が、とても綺麗な瞳から溢れた瞬間を。 「悠壱……」  でも、これは仕方ないかな。 「好きだよ」  好きな人が泣いたら、何よりも早く手を伸ばして、その涙を拭ってあげないといけないから。それに、シャッターを切るよりも、キスがしたくてたまらなかったから。  実紘が入ってくるこの瞬間が堪らなく好き。 「あっ…………あぁっ」  実紘に跨りながら、背中を仰け反らせて、太くて硬くて、熱い。 「あぁぁっ」  実紘のが入ってくるだけで。 「すげ……中、きゅうきゅうしてる」 「っン」  一枚写真を撮った。 「気持ちい、よ」 「あぁぁ、あ、下から突き上げるの、して」 「もっと?」 「ンっ」 「悠壱の中、すっごいやらしいんだけど」  小刻みに中を擦られて、揺れる。 「本当、エロいよね……写真撮る度に、甘イキして」 「あ、あ、だって、実紘の熱くて」 「すごい?」 「ン」 「どのくらい?」  自分から背中を丸めて、奥に実紘のペニスを受け入れる。 「んんっ」  甘ったるい、鼻にかかったやらしい声で啼きながら。 「何も、あぁっ……考え、られなくなる、くらい、気持ちい」  そう告げて、ベッドに寝そべる実紘に縋るように頬を寄せて、舌を絡ませて、濃くて濡れたやらしいキスをする。 「やば……悠壱」 「ん、もっと……奥、する」 「いいけど、あとで一緒に風呂に入ることになるよ? 足、立たなくなるだろ?」 「い、い」 「ハメ撮り興奮した?」 「あ、あ、あ」  自分で腰をくねらせた。前立腺を自分から実紘のに擦り付けて、自分から快楽を咥えて。中が実紘に悦んでしゃぶりついて。それに表情を変える実紘を独り占めするように写真に撮って。 「実紘……」  俺を抱く実紘の。 「好き」  全部を。 「俺の……」  写真の中に独り占めしたい。 「あぁぁっ」  ずるりとギリギリまで抜いて、そこから一気に奥まで貫いただけで、ほら、また濡れてしまう。 「エロすぎ」 「あ、あ、あぁん、あっンっ……あ、あ、悠壱」 「やば……カメラにイラつく」 「ぇ? あぁっ」 「そんな大事にそうにカメラばっか抱えないでよ」 「だって」  乳首を指で摘まれただけで、腰が跳ねるくらいに。 「俺を抱えなよ、悠壱」 「あ、あ、あ、あぁっ……ン」  カメラを奪われて、唇を呼吸ごと奪われて、指先を絡めてがんじがらめに閉じ込められる。 「俺にしがみついてよ、ねぇ」  この腕の中に。 「悠壱」 「あ、あ、奥っ」  ズブズブってもっと入って。 「っ」 「あぁぁぁっ、そこぉ……あっ」  もっと来て。 「実紘、ぁ」 「奥に俺を挿れさせて? 悠壱の一番」 「来て……欲し、俺の」  入っちゃいけないとこまで全部。 「実紘でいっぱいにして欲し、ン、あっ!」  奥が開かれて。 「悠壱」 「好、き……」 「悠壱」 「好き……もっと、実紘、あ」 「っ」 「あ、あ、あ、あぁあぁぁあっ」  深く、深く、熱いのでいっぱいになって、溢れるくらいにいっぱいになりながら。世界で一番綺麗な彼を独り占めするために手を伸ばして抱き抱えた。

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