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初旅行編 6 夕暮れの色に染まる
「は、ぁ……っ」
すごいところで、してる。
外で、なんて。
誰もいないからと、こんな場所で寝そべって、甘い声をあげてる。
そう思うけれど、止められない。
昨日だってしたのに。
足りないんじゃなくて、満足していないとかじゃなくて、ただ、もっと実紘に抱いて欲しくてたまらなくなる。
「いーよ。声、出して。完全離れで、俺らしかいないから」
「あっ!」
そう言って、綺麗に微笑んだ実紘が覆い被さり、乳首に歯を立てた。その拍子に零れた甘い悲鳴と、反射的に動いた手が湯をパシャンと叩いて、水音が跳ねる。
キスされただけで期待にぷっくりと膨らんだ乳首は、実紘の唇に扱かれて、ツンと尖って、感度をあげてしまう。口に含まれ、その舌に溶けそうなくらいに舐められると、勝手に腰が揺れてしまう。
切なくて、めちゃくちゃにされたくてたまらなくなる。
噛んで、とねだってしまいそうになるのをキュッと唇を結んで堪えていると、その結び目を解くように、甘くて蕩けるキスをされた。
「悠壱」
実紘の背中越しに夕暮れの綺麗な空が見える。普段は四角い建物に阻まれて、全容を知ることはできない空が同じものとは思えないくらい、今日は綺麗だった。水色と、紫、それからピンクに近いオレンジ色が、本当にバケツでインクをぶちまけてしまったように、まだらに色を変えている。
それを薄っすらと目を開けて眺めながら、舌を絡ませていた。
「……あ、実紘っ」
髪を撫でられるとゾクゾクして。
「んっ……ン」
甘噛みされて、アッシュカラーにその夕暮れの落ちかけた陽の色が重なった髪を指に絡めながら、乳首を可愛がってくれる実紘の頭を抱きかかえた。
ウッドデッキに寝そべって、露天風呂に足だけ浸けて、裸のまま、人目も気にすることはないと抱き合ってる。
「んっ、ぁっ」
乳首を責められてゾクゾクっと快感が背中を駆け抜ける。
「寒い?」
「ちが、うっ、あっ、あぁっ!」
寒いとかじゃない。実紘の舌の心地に身震いするほど感じてる。
「すご……悠壱」
「あ、あ、あ、これっ」
実紘のが硬くなってた。身体をずらして、キスをしながら、腰に触れた硬くて熱いそれに手を添えると、キスの合間に実紘が気持ち良さそうな溜め息を溢してる。
「はっ、ゆ……いちっ」
「ん……ン」
眉間に皺を寄せて、息を乱してるのが色っぽくて、その唇に自分からしゃぶりつきながら、それぞれの硬くなった熱を擦り合わせて。
「あっ、ン」
「これ、やばい」
「あ、あっ」
身体をしっとりと重ねながら、下で快感に身悶えている俺の背中と木の板の間に手を滑り込ませると、引き寄せて、腰を揺らしてくれる。実紘の肌の火照りに蕩けそうになりながら手を必死になって動かしていた。
「あぁっ」
首筋にキスをされながら、抱き合ったまま、そそり立ったそれを二本、一緒くたに扱いて。
「あ、あっ」
「俺、知らなかった」
「? な、に……」
「楽しみとかさ、最後にとっておく方っぽい。今まで楽しみって思えること、なかったから知らなかった、けど」
「……」
「悠壱、後で挿れさせて」
「あっ」
首筋にキスマークが施された。
「我慢、が楽しいなんて思わなかった」
「あ、あ、あ」
「挿れたくてたまんない」
また、もう一つ、キスマークが首筋に。そして。
「あとで、ここ、挿れるから」
「あぁ、あ、乳首っ、ンっ」
キュッと抓られながら、舌同士をたっぷりと絡ませてくれる甘いキスに、色がいつの間にか紫から夜の色へと移り始めた空の下で身悶えて。
「ね、悠壱の手でイかせてよ」
「あ、あ、あ」
「悠壱の手、すげぇ、好き」
「あ……ン」
「カメラを構えてる時はすげぇカッコよくてさ、っ、料理上手くて、なんでもできて、器用だなぁっていつも思って、た」
低い実紘の声が、俺の手の動きに合わせて、止まって、つっかえて、たまにその声に溜め息が混ざってる。気持ち良さそうなのが嬉しくて、もっと気持ち良くなって欲しいと手を動かした。
「悠壱」
「あっ……」
「一緒にイこうよ」
「あ、ン……ン、ンンっ」
「……悠壱」
脚も絡ませて、俺の両手は二人の熱を必死に、忙しなく扱きながら。もっと、もっと、もっと近くに行きたいって、身体を擦り合わせてる。
「っ、悠……」
実紘の手は俺の髪を弄りながら、そっと掻き乱して、もう片方の手が頬を撫でてくれる。
「んんんんっ」
その手、指がキスでびしょ濡れになった唇の端にそっと触れると。
「あっ!」
すごく気持ち良かった。
「あっ……イクっ……ン、ん」
絡まり合う舌に翻弄されながら、快感に濡れた吐息も唾液と一緒にキスで互いに貪りながら。
「あ、あっ」
びゅくりと弾けたのは同時だった。弾けて、忙しなく動かしていた手の中が二人分の熱でびしょ濡れに。
「っ、悠壱」
切なげな声が嬉しくて。俺の手で気持ち良くなって、達してくれたことが嬉しくて、首を傾げてそっとキスをした。裸で、ウッドデッキに二人で転がりながら、こんな広い空の下、苦しくなるくらいに隙間なくくっついて、ピッタリと肌を熱を重ねて。
「実紘……」
そして名前を呼ぶ自分の声が、自分でもわかるくらい、甘ったるくて、そして、愛しさが溢れてる、そんな声だった。
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