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初旅行編 12 独り占め
――他になんて触らせないでよ。
そう言って、実紘にきつく抱き締められて、身体がものすごく熱くなった。
引き寄せられて、腰を押し付けられたら、もう……こんなに簡単に、スイッチなんて入るんだ。
「あっ、実紘、や、舐め」
「握手もダメ」
「っん」
「掌にキスされただけで、ここ、こんななら、本気で、禁止しないとじゃん。悠壱って、どこ触っても発情すんの?」
これは別に、そんなんじゃない。
「ン……ん、これは、実紘が触る、からっ」
ただ、実紘がしてくれる独占欲が嬉しくて、仕方がないだけ。
「あっ」
離れになっている俺たちの部屋に戻ってすぐ、ドアを閉めた途端に抱き締められて、手をそのドアに押さえつけられながら、首筋にキスをされて、甲高く啼いてしまう。
「帰りにはすごいことなってるかも」
「ぇ?」
「悠壱、しばらくの間は着替えとか困るね」
全身キスマークだらけ、と呟きながら楽しそうに実紘がまた首筋にキスをする。そして、キスに喘ぐ俺の服の間に手を潜り込ませ、脇腹を撫でてから、その長い指で昨日も可愛がられて敏感な乳首をキュッと摘まんだ。それだけで前がジワリと濡れるのに。
「ン、んっ」
乳首を指でいじられながら、舌が絡まる濃厚なキスに、ドアに押し付けられた掌を指が優しくくすぐる。どこも気持ち良くて、まるで「もっと」ってねだるよう背中を反らして、実紘の指に自分から乳首を押し付けた。
「ぁっ」
「やらしい……」
満足そうに囁く実紘の綺麗な笑みにキスをした。口づけて、舌にしゃぶりついてから、その場にしゃがみこんで、もう硬くなってくれている実紘のペニスに布越しに唇で触れる。これを口にしたいと伝わるように、その膨らみに唇を添えて。
「っ」
スイッチ――。
「悠壱、シャワー浴びてないけど?」
入れたのは、実紘だ。
「……すげ」
パンツのチャックの金具を咥え、口だけでそれを下ろして、下着越しにまたキスをした。
「ね、意地悪しないでよ」
「あっ」
そのキスのもどかしさにしかめっ面をしながら下着を実紘が自分で下ろしてくれた。そして、口で咥えてと促すように頬を撫でてくれるその掌にもキスを。実紘の全部が愛しくて、恋しくて、もっと可愛がられたいと必死になって、その手にしゃぶりついて、掌を舐めていく。
「汚いよ、俺の手、なんて」
「汚くない……でも、これは……」
実紘がくれるキスマークと一緒だ。
「俺がさっき悠壱のファンと握手したこと、嫉妬、してくれたの?」
「ン……ふ、ぅ」
実紘の掌を舌でくすぐった。
さっき、あの話しかけてきた彼女の掌が握った手を、まるで自分の匂いをつける猫みたいに。
「なんか、やばい性癖開きそうなんだけど」
跪いて、自分の頬に涎がつくのも構わず掌に愛撫をしながら、実紘を見上げる。
「ン」
見上げながら、すぐ鼻先でそそり立つ実紘の熱を手で撫でて。
誘うように実紘を見つめた。
――いいよ。
そう視線が促してくれる。
「やば……」
低く、ぼそっとそう呟いて、実紘が玄関の靴箱の上に置いておいた俺のカメラを手に取った。
「撮らせて」
「ン」
「悠壱のやらしい姿」
ゾクゾクした。
「いいでしょ? 今日一日、カメラ貸してくれるって言ったじゃん」
カメラを構えてくれる実紘に。
「……む」
口に含んだ瞬間、シャッターの音がして、口の中でペニスがピクンと跳ねた。熱の塊みたいに熱くてたまらない実紘のを口に咥えると、溢れる唾液を絡めながら口の中でペニスを濡らしていく。むくむくと、もっと大きくなる熱を口いっぱいに頬張りながら、自分のも何度か扱いてから。
「ンっ……」
自分のカウパーで濡れた手で後ろを撫でた。
「あっ……ん、む……ん、ンん」
実紘のをしゃぶって、舐めて、手は後ろをほぐして。先端に舌を差し込むようにしてから、ペニスの先の丸みをなぞるように唇で吸い付いて、括れたところを舌で舐めてから、裏筋をキスで擦って、根本に辿り着くとそのまま音を立てて吸った。口に含んで、構うことなく顔を埋める。
「えっろ……」
しゃぶりつきながら、もう片方の空いた手で、自分の乳首を摘まむ。
実紘はカメラを構えているから、俺は自分でその手の代わりに。
「ン」
自分の指なのに。
口の中で扱くと実紘が息をつめてくれるのがわかる。
中を弄ると指をきゅっと後ろの孔が締め付けるのがたまらなくて、興奮が自分の指先から頭のてっぺんまでぐるぐると駆け巡る。頭の中と、腹の奥の辺りが熱にジリジリと焦げつきそう。
「悠、壱」
痴態を見つめられて、また興奮が増していく。口でしながら自慰をしてるなんて、恥ずかしいのに、そんなところを撮られてるのに、もっと、したくてたまらない。
頭を撫でられただけでも感じてる。髪の先まで神経が通ってるみたいに、髪を梳いてくれる指に合わせて腰が揺れる。
「ン」
俺がカメラを構えるのは、写真に撮るのは、その瞬間の彼を独り占めできたと嬉しくなるから。だから。
――カシャ。
シャッター音がする度に感度が上がっていく気がした。
「ン、ンく」
シャッター音がしたら、その瞬間、その時の俺に実紘が興奮して、写真に収めたいと思ってくれたってことだから。
今だって……。
――カシャ。
「悠壱……」
「ぁ……ん」
また、実紘が写真に、俺を。
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