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第11話
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「ねぇ理央。 あのアルファに何かされてない? 僕、心配だよ」
昼休みの学食で卵丼を頬張るオレに、今日も超絶可愛いキラキラオーラの七央が眉尻を下げながら聞いてくる。ちなみに七央の前に並んでいるのは旅館の板前さんが作った色とりどりの松花堂弁当だ。七央は食べる物もキラキラしてる。美味しそう。
あのカフェで七央が珈琲の講習を受けている間、九条くんはずっと七央を眺めては溜息をつき、オレを相手に散々七央を褒めちぎっていた。
ところがいざ講習の終わった七央が側に近付いて来ると、逃げる様にさぁーっと姿を消した。
本当に情けない。あんなヘタレなアルファがいるなんて。しかも本来オレのような変わり種庶民が、気軽に口を利くのも憚られる家柄のご子息なのに。そう考えるとちょっと笑える。
「あのアルファ、って、九条くんの事? あはは、何もされる訳ないだろ。七央じゃあるまいし」
「はぁ…。 理央。 お前はもう少し自分を知った方がいいよ」
「んん? 大丈夫だよ。ちゃーんと分かってるから」
これ以上ないくらい自己分析は完璧だ。立ち位置だって間違えた事はない。故に、オレは七央の従者であり、七央の引立て役であり、生涯七央信者なのだ。どうだ、完璧だろ?
「理央ったら……。 その前に理央は、オメガだって自覚してよ。 あのアルファとは、もう会っちゃダメだよ」
「ーーー…え、どうして?」
会っちゃダメなんて、何でだろう。もしかして七央、少しは九条くんの事気にしてるのかな。これはいい傾向かもしれない。
「どうしてっ、て。 理央にもしもの事があったらどうするの? そんなの僕、堪えられないよ」
「もしもの事、って…。 ないないっ!有り得ないって! だって九条くん、オレの事ベータだって疑ってもないんだよ?」
「はあぁ!? …何それ。あのポンコツアルファ。失礼にも程があるでしょ! こんなに可愛い理央の事、ベータと勘違いしてるなんてっ。そっちの方がよっぽど有り得ないんだけどっ」
ぷーっと膨らんだ七央のほっぺの方が、遥かに可愛いんだけど。
「ふふふ…。 あのさ。オレを可愛いなんて言ってくれるの、七央だけだよ。 幼なじみフィルターってやつじゃない?」
「ん、もぉっ! そん、な事、ないっ!理央は可愛いのっ! 世界一可愛いんだからねっ」
力説する七央も可愛なぁ。そんな七央は銀河一可愛いぞ!
「えへへ。オレ、嬉しい。 でもさ。九条くんは別にオレに会いに来てる訳じゃ無いんだよ。あの人はね、七央に会いに…」
「だーかーらーっ! そもそもそれが駄目なのっ! 僕をダシにして、理央に近づくなんてサイテーだよ」
いやいやいや!逆だってば!寧ろオレがダシにされてるんだって。
「七央…。 そんなに九条くんの事、嫌いなの?」
「だーーーいっ、きらいっ!」
あー…、ははは。
九条くん、ごめん。オレはどうやら恋のキューピッドにはなれそうにないや。
心の中でひっそりと手を合わせた。
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