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第20話

 ****    医学の進歩とは目覚ましいものだ。  それにオレは薬のよく効く体質らしい。秋さんにおすすめされた抑制剤も頗る調子がいいし。  はぁ…。あの悶々としたヒートから開放されて良かった。  2日の措置入院が終わり、それから4日間の自宅療養をしてからオレは学校に復帰した。  「理央っ! もう、大丈夫なの?」  七央はあれから何度か家を訪ねてくれたけど、オレは会うのを断っていた。何故か家族もその方がいいと承諾してくれて、決して七央を部屋には通さずにいてくれた。だから今日、3週間振りにこうして顔を合わせてる。  「うん。 もう、すっかり元通りだよ。ごめんね、心配かけて」  「ううん。 でも良かった。理央が親切な人に助けられて。 僕こそごめんね。せっかく会いに来てくれたのに留守にしちゃってて」  あ、そうだった。七央はあの日、九条家に招かれて出掛けていたんだっけ。  「そんなの気にしないで。 それより、七央。オレに何か報告する事ないのかな?」  「報告? …どうしてそんな事聞くの?」  まだ隠す気なのかな? もう、早く教えて欲しいのに。  発情期の間ずっと七央と九条くんの事を考えた。どうせ何を考えても結局最後はこの問題に行き着くなら、とことん考えて自分なりの答えをみつけよう。そう思って過ごした。  そうしてみつけた答はこうだ。  「あのね、七央。オレこの一週間凄くたくさん考えたんだ」  「うん? 何を?」  聞いてくれる?  「オレは七央が大好き!」  「本当? ふふ、嬉しい。ありがと理央」  うん。もうこれは絶対揺るがない!オレの世界はずっと七央だったし、それはこれからも変わらないんだ。  「それからオレ。 九条くんも、好き」  「……そう。 そっか」  これもしょうがないよ。だってあの日嫌って程思い知った。翌日看護師さんがびっくりする程泣き腫らした顔は、自分でもドン引きものだった。  「だから。大好きな七央と九条くんが、番になってくれたらオレ嬉しい」  「は、はぁ?」  うん。そうなんだ。結局それが一番しっくりくるんだ。大好きな人達が幸せになるんだもん。そんなの喜びしかないじゃないか。  「でも仲間外れは嫌だよ?」  「ち、ちょっと待って理央。それ、」  「オレね。いい薬教えて貰ったの。ヒートの抑制剤。このままずっと発情期なんか来なくていいし番もいらない。だから、七央と九条くんが番になって結婚したら、二人の赤ちゃんのお世話係になりたいです!」  そう。オレはどうしたって二人と一緒にいたいんだ。それにはこれが一番いいと思った。もうこれしか方法が見付からない。  「り、理央っ! だからちょっと待って!何、それ。 どうして僕とアイツが番なんかになると思ってるのっ!?」  「え…。どうして、って。 だって七央。この前九条家にお呼ばれしたんでしょ?」  七央のヒートの直前まで顔を合わせていた二人。その期間明けに九条家からの招待。  それは正式な婚約とか、そういう事を話し合って来たんじゃないの?    「確かに九条家には行ったよ。でもそれは別の用事で、あのポンコツなんかに会いに行った訳じゃないよ」  「…え。 そ、そうなの?」  「もぅ…。心臓に悪い事言わないでよ。僕は何がどう間違えても、あのアルファと番なんかにならないし、なれる訳も無いんだよ」  「え…っと。 そ、それじゃ…」  あれあれ? も、もしかして、オレはまた飛んだ誤解をしていたのか?  「それから理央。 お前に話さなきゃならない事があるんだ。 落ち着いて聞いて欲しいんだけど、実はね…ーーー」

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