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第21話
「ーーーー…え? う、嘘でしょ?」
「ううん。嘘じゃない。本当なんだ」
今まで隠しててごめんね、って…、七央。そんなの急に言われても、どうしていいのか分からないよ。
だってだって。七央が、あのオメガの中のオメガみたいな七央が……、う、嘘だ。
ーーー『本当は僕、アルファなんだよ』
* *
どうやって家に帰って来たのか分からないけど、気付けばオレは自分の部屋のベッドの上にいた。
頭の中が混乱してて、何をどう考えたらいいのかも分からない。
ただぼんやりと見慣れた天井を眺めてた。
ショック…、なのかな?
あの銀河一可愛くて可憐な七央が?
華奢で儚げで庇護欲を唆られる七央が?
オレが生涯守らなきゃって思ってたあの七央が…、まさかの、アルファ?
「…しかも、番持ち、だって」
こんな事ある? いや、いやいやいやっ!
「だ、誰かっ!嘘だと言ってっ!!」
オレの七央がアルファだった、ってだけでもパニックなのに。なに? その上もう番がいる?
そういえば高校2年の時、七央が急に半月近く学校に来ない事があった。みんな色々と噂してたけど、半月振りに登校した時に項はいつも通り綺麗なままで、変な噂も直ぐに消えた。
あの頃学校でも七央はオメガだって皆思ってたから、項の噛み跡がなかった事にホッとしたんだ。
けど、七央がアルファだったなら、噛み跡なんか無くて当たり前だ。だってアルファは噛み付く方で跡を残す方なんだから。
え?…って、事は。七央…、ってもう、け、経験者!?
「いやっ!ダ、ダメっ、ダメダメダメダメ!これ以上はダメッ!!」
生々しい想像をしてしまうところだった。
う、うわぁーーーっ!やだーーーっ!
ベッドの上をゴロゴロしてしまう。何だかじっとしていられない。
「うっ、わぁっ!」
ドシンとベッドから転げ落ちた。
いててて…、何をやってるんだオレ。
階下にいる母親が、何暴れてんの、コラッ!と叫んでる。 う…、ごめんなさい。
「ーーん? 待てよ? じゃあなんで、九条くんは七央の匂いがするなんて、言ってたんだ?」
おかしい…。そもそも七央はオメガですらないんでしょ? なのに九条くんは、うっとりしながらいい匂いって。
「ち、ちょっと待って。 オレ今、もの凄く怖い事想像しちゃったぞ…」
あのオメガちっくな七央がまさかのアルファなら、九条くんももしかして…アルファちっくなオメガとか……。
「そ、そんなぁ…。それだけは嫌だぁ…」
ううぅ…。神様どうかお願いします。
オレの想像が間違いでありますようにっ!
翌日『松永理央様』と記された箔押しの招待状が九条家から届いた。
拝啓から始まったその招待状には、九条家三男、流星の誕生パーティへ是非ご参加ください、と書かれていた。
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