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第25話
「あっ!」
「えっ!? な、なに? どした!?」
思い出した。そうだった…。
「流星くん…。 こ、婚約って、誰としたの?」
「へ? 婚約…? あ、ああ。 あれね」
どうしてあんなに悲しかったのか思い出した。邸の入口で見た“婚約披露”の文字。あれがショックで耐えられなかったからだ。
「オ、オレ…。流星くんが…、だ、誰かと結婚しても、す、好きでいて、いい?」
「は? いや、いやいや、待って理央」
え…?だ、駄目なの? 好きでいるくらい許してよ。
「ふぅぇ… ぅぇえ…」
「あ、ばかっ!勘違いするなっ、違うぞ?理央が思ってるような事じゃないからっ!」
言うより早いと、オレを担いだまま邸まで戻った流星くんは、あの“婚約披露宴”と掲げられた大広間に駆け込んだ。
「ほら理央。 見てごらん」
そう言われて、恐る恐る広間の奥に目を向けた。
パステルピンクのカーテンが艶々と輝く壇上に、スラリとした綺麗な人が立っている。流星くんと同じ栗色の髪はキラキラと輝いていて、遠目にも分かる程その表情は幸せそうだ。
「あれ、俺の兄貴。婚約したのは兄貴で、その婚約者ってのが、…」
「ーーーん?、え…、な、なんで?」
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