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第27話

 とてもお似合いで幸せそうな二人の姿をちらちらと振り返りながら、流星くんに手を引かれ連れて行かれた部屋には暖炉があって、真ん中に少し大きなローテーブルと、それをコの字に囲んだ大きなソファが並んでた。  テーブルの上には苺の乗った小さなケーキとティーセット。それから蓋のされたお皿が数枚並べられている。こじんまりとした誕生会というのは本当らしい。  普段応接間として使用しているらしいその部屋を「あっちより狭いだろ」と、流星くんはちょっと照れながら教えてくれた。  「オレんちのリビングよりうんと広いよ! 流星くんて、本当にお坊ちゃまなんだね」  「お坊ちゃま、って。 何か恥ずかしいからやめてよ」  あ、拗ねた。可愛い。  「えへへ。ごめんね。 …ところでさ。他の人は? まだ来てないの?」  誕生パーティと聞いていたのに、招待客が他にいないのが不思議だ。まさか流星くん。……ボッチとか?  「…違うぞ、理央。 なんかお前の考えてる事、手に取るように分かるんだけど。別に友達がいないんじゃないからな」  そ、そうだよね。ごめん。  「本当の誕生パーティは来週なんだ。週末にホテルの会場で盛大にやるんだよ。 まぁ一応、九条家のお坊ちゃまが二十歳になる祝いだしな。今後の顔繋ぎみたいなもんだ」  「へぇ…。お坊ちゃまって大変なんだね」  そうだよ、面倒くさいんだよ、と本当に嫌そうにしてる。庶民には到底理解の及ばない苦労らしい。  「ん? じゃあ今日は何で?」  「そんなのっ、…理央に祝って欲しかったからに決まってんだろ。 俺の誕生日、今日だから」  「ーーえ? そ、そうなの!?」  うわっ、どうしよう。オレ、ホントに何にも用意出来なかった。まさか本当に今日が誕生日だなんて…。  「流星くん、あのオレ、何も用意出来なくてごめんね。 次会う時までに何かプレゼント考えておくよ!」  「ううん、理央。もう貰ったからいい」  え? オレ何も渡せてないよ?  「で、でも、…ーーー」  「俺を好きって言ってくれただろ。 それと名前。 俺の名前呼んでくれた。それだけでもう充分、嬉しいプレゼントだよ」  そんなんでいいの?  好きなんて、もういらないってくらい言うし、名前なんてきっと寝言でも呼んじゃうよ。  「理央。 あのさ、さっきの続き、言ってもいい?」  続き…? 何だっけ?

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