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ep.7

「あの女は辞めとけって、何だよソレ」  教室の椅子に座ったまま鋭い眼をして桜庭は目の前に立つ三住を睨んだ。 「…あのサヤって子。俺が良いんだって」と覇気のない目と声で三住は返す。    サヤは合コン女子の中で一番人気だった。時田も彼女を気に入ったらしく、そこから少し連絡を取りあっているようだった。 「だからさ、何でソレをお前が言うの? あの子がお前が良いって言う場面があったってことだろ? 二人で会ったのか? それってつまりお前が時田の邪魔したって事だろ? お前に誘われたら普通女はお前を選ぶだよ、お前は常にモテんだから」 「…何、それ…」  瞳の色が少し暗く変わったように見え、桜庭はドキリとしたけれど、もう発した言葉は取り消せない。 「何って事実だろ…、お前いっぱい女いたじゃん」 「それって、女なら誰でも良いんだろって? どうせなら他の三人の女にしとけって、そういう事?」  苦しげに話すその目は次第に赤らんできていた。 「─俺はずっと、片想いのままだ…」  絞り出されたその苦しげな声が桜庭の胸深くに刺さり、一気に後悔へと色を変える。 「お前…サヤちゃんが好きだったのか…? ごめん、俺、気付かなくて…」  最後の言葉を口にする前に三住は背を向けて消えた。桜庭は唇を噛んで拳を固く握り締めた。 「あのさぁ、それって別に男ばっか責めるの違くね?」  昼休み、時田は冷静に桜庭を諭す。 「だって、あの子の事気に入ってたんだろ?」  申し訳なさげに上目遣いで時田を見た。 「そりゃあ、クソーッて気持ちはあるよ? あるけど今俺のところに他の女子からデートしよって連絡来たら俺はするよ。あの中でそんなのはダメ、出来ないって断るのは桜くらいだわ」  桜庭はカルチャーショックで顔を白くする。 「う、嘘っ」 「こんなもんはタイミングなの。すぐに動かない奴が負けんの。三住ばっか責めんな」  時田にも否定され、桜庭は完全に落ち込んでしぼんでしまった。ヨシヨシと子供の頭でも撫でるかのようにうな垂れた頭を撫でて慰める。 「でもさぁ、三住誰かに片想いしてるんだな? 誰にだろ? あっ、まさかお前とか?」 「はぁ?! 冗談も大概にしろ!」  桜庭はさっきまで完全に落ち込んでいたくせに、一気に目を吊り上げて睨んだ。

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