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ep.10
花火大会に行こうと三住に誘われた。
時田も誘ったが、最近の判り易い二人のいちゃつきに氷点下の視線で断られた。
「にしきかむろぎく?」
「そう。大きくパーって開いて、最後柳みたいにサーって降ってくんの!」
「その説明、全然わかんねぇな…」
桜庭は三住の胸に頭を乗せたまま暫く花火について話していたが、自分の頭を撫でる手が止まり覗き込むと三住は眠ってしまっていた。
「もー、寝るなよなー」
頭に乗せられた手を握りながら桜庭は微笑む。
「花火、楽しみだな…」
ゆっくり起き上がって寝顔を覗き込むと、すごく愛しく思えた。
「なあ…なんで…」
─キスも、ダメ…?
三住の額に唇を当てて、ゆっくり下がって行く。
緊張して桜庭は震えていた。
ようやく触れた唇は暖かくて、柔らかくて、
胸の中がジンと熱くなった。
「おいっ!!」
怖い程大きな声で三住が目を覚まし、乱暴に体を突き飛ばされる。
「何してんだよ!」
「そっ、そんな怒んなくてもいいだろっ…だって…」
桜庭は完全に萎縮してしまっていた。
「俺の部屋に何でお前なんかがいるんだよ!」
「え…?」
三住が纏う空気が明らかに先程までのものではなかった。
「何でお前とキスなんか、クソッ……」
三住は嫌そうに手の甲で口を擦ると、何も言葉を発せないまま涙を流す桜庭を睨み付けた。
「ご、ごめんなさい…」
震えながら白い顔をして桜庭は家から飛び出した。
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