11 / 12
ep.11
─俺の勘は当たってた。
やっぱりあれは偽物で
さっきのが本当の三住だ…。
─こうなる事を三住は知ってたんだ…
だから心だけって…
前の自分に戻りたくないって、思ってくれてた。
─なのに、俺、約束破った…
「ごめんなさい。三住…ごめんなさい…」
何度後悔しても謝っても、涙は止まることはなかった。
「可哀相に、貴方は本当にとばっちりだ」
真夜中、自室の中で知らない声がする。
桜庭はぼんやりとその声に耳を澄ました。
「あの男の呪いに巻き込まれて同情します。お可哀相に…もしお辛いのなら取り除いて差し上げますよ、貴方の心。そうすればこの辛さも傷も全部忘れて楽になれる」
─忘れる…?
全部…?
「ううん、忘れたくない…三住が忘れたのに、俺まで忘れたら…あの三住をなかった事にしてしまう…。俺の…特別…」
桜庭はそのまま意識を手放した。赤く腫れた目元にはまだ涙が光っていた。
翌朝、時田は目の腫れた桜庭に何を聞く訳でもなく、一緒に花火見るかと笑いかけた。
ともだちにシェアしよう!