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第7話 日向の道
彼は持ち直した。
大事な受験時期を乗り切り、高校生になってもモテるのに変わりはないらしく、すらりと長い手足を時々持て余すほど、すくすくと成長した。兄とはまるで似ていないが、成績優秀なところは、僕よりずっと出来が良かった。
現国の教科準備室から渡り廊下を渡り、化学室の横を通り過ぎようとした時、誰かの話し声がした。
「……」
「……」
化学室の中に誰かがいた。
半分閉まったカーテンが風を孕んでゆっくりと揺れている。その影に隠れるようにしている彼を見つけた僕は息を呑んだ。
女子生徒と一緒にいるのを見るのは珍しいことではなかったが、その女子生徒の背中に半分寄りかかるように手を回しているのが見えた。
学校で、不謹慎だぞ、と本来ならば注意するべき場面で、僕はその光景から目が離せなくなった。足が竦んだ。
風に任せてカーテンが弧を描く。
女子生徒と抱き合っていた彼が、ふと伏せていた視線を上げた。
目が、合う。
刹那、僕は弾かれたように踵を返し、その場を立ち去った。
心臓が暴れていうことをきかない。
嘘だ。
いや、嘘じゃない。
でも。
彼が日向を歩いていってくれることこそを、僕は願っていたんじゃなかったか。
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